繋いだ手は離さない
 二人でコーヒーショップに入ると、ウエイトレスが案内してくれた。


「お二人様ですね?」


「ええ」


 ボクがそう返すと、ウエイトレスが奥の座席へと誘導してくれる。


 愛理香と並び、ボクたちは席に座って、手渡されたメニューを見ながら、ある程度カロリーがある若者向けの食事を取ることにした。


「俺、このピザがいいよ」


「あたしもそう思ってたの」


「じゃあこれ一枚頼んで、後はコーヒーで済ませようか?」


「ええ」


 愛理香が頷くと、ボクが近くにいたウエイトレスに、写真で見る限りではかなり大きなピザを一枚とアイスコーヒーを二人分頼み、メニューを返した。


 ボクたちは向かい合う形で席に座っていて、ゆっくりし始める。


 渋谷の街は喧騒に満ちていたが、ボクも愛理香も不思議とそんなに気にならない。
< 91 / 124 >

この作品をシェア

pagetop