笑わない冷血姫は溺愛王子様たちに捕まりました。
♢噂の冷血姫
中等部2年に進級した、桜が舞い散る4月
私は絶賛大ピンチ中です…、
「月摘さん…!!一目惚れしました…!良かったら俺と付き合っ…」
目の前には今初めて見た男子が真っ赤な顔で私に告白をしている光景が映っている。
きっと、凄い緊張したんだろうな…、
申し訳ないけど…
「ごめん、無理。」
今日で16人目だな……
正直、毎日のように告白を断るのは心が痛いけどしょうがない…
この人がどんな人であろうと関係ない、私に恋愛は必要ないから。
「毎日のように告白されてるのに表情1つ動かさないなんて…さすが”笑わない冷血姫”だな。」
「容赦ない振られ方されてんじゃん…笑。」
「しょうがないよ。確か…男性恐怖症…だっけ…?」
「…てか待って、生初めて見たけど顔整い過ぎじゃない…?後光が見えるんだけど…」
「ファンクラブも凄い数あるらしいしな。」
「紗菜様にだったら、私振られてもいいかもぉ…。」
あぁ…表情筋が少しも動かないのはコンプレックスだから触れないで…。
男性恐怖症は…治したいんだけどなぁ…
あ、やばいっ、早く戻らないと…授業始まるっ…
「それじゃあ。」
早急に体の向きを180度回転させて、教室に向かおうとした時ーー
「あ、ちょっと待ってください…!月摘さん…!」
ーパシッー
「俺の話を聞いて下さ…」
「ひゃっ…」
「え、…?」
あ、…やばい声がっ…いつもは我慢出来るけど急に掴まれると流石に無理っ…!
てか、じ、蕁麻疹が出てきちゃった……
後で薬飲まないとだなぁ…ていうかやっぱり男性恐怖症治ってない…
「ご、ごめんっ…」
私はその男子生徒の手を無理やり振り払って教室に向かって走った…
ーー
時間は昼休み。
私はいつもの如くぼっちで、神様に無謀な願い事をしていた。
どうかどうか神様仏様…あの声を聞いた人々の記憶を抹消して下さい…あとついでに男性恐怖症も治してくださると幸いです。
…なんて都合のいい事ないかぁ…
よし、こういう時は寝て忘れようっ…!嫌な事があった日はこれに限る…!
そうと決めたら机に突っ伏して爆睡の準備しよっ…
「ねぇねぇ、この学園に編入生が4人来るって知ってる?」
「え〜!そうなの…!?初めて聞いた…。」
「しかもしかも!その編入生達全員めっちゃイケメンらしいんよ…!」
「本当…!?最高過ぎじゃない…?」
「それな…!まじイケメンは目の保養だから嬉しいわぁ…。」
ん…?編入生?
この時期に編入って珍しい…まだ4月の後半なのに…、
ていうか4人も男子が編入するとか私にとって地獄でしかないんだよなぁ…
嫌な事がまた増えたって事で寝よ…
ーキーンコーンカーンコーンー
ん…?チャイム…?
まだ休み時間は30分以上あるのに…
《えー、月摘紗菜さん、至急理事長室に来てください。》
え、…?
まさかの私…?
ていうか理事長室って…嫌な予感がっ…
ーー
理事長室
理事長「……、」
教室の4倍程広い理事長室はたった今ただならない空気に包まれている…、
「あの、要件は何でしょうか?」
正直嫌な予感しかしないけどね…
整っている顔立ちをしている理事長が険しい顔をしていると、威圧感が凄いな…、
理事長が徐ろに口を開いた。
理事長「紗菜っ!今は2人なんだから敬語は抜きなさい!冷たくされたらお父さん悲しくて死んじゃうよぉ…!」
あぁ…いつものお父様だ…、
変わらず、さっきの厳格な雰囲気はどこに消えたのかと思う程のギャップ…
「いや、ここは学校なので公私混同は良くないですよ、理事長。」
そう、この月摘学園の理事長は私の父ーー月摘洸なのである。
結構イケメンで若いこともあり、学園の生徒からは凄く慕われていて人気を博しているんだけど…、
見ての通り、家族命…!といった感じの…いわゆる残念イケメンという感じ。
私や仁兄、特にお母様にこれでもかというほど甘い上に過保護で、お母様には常にGPSを付けて、敏腕なボディーガードをつけるという溺愛度…
まぁ、お母様ーー月摘華凪は絶世の美女でお父様が過保護になるのは分かるけど…やりすぎな気がするのは私だけかな…?
…って今はそんなことどうでも良くて…
「理事長、要件は何でしょうか?
こちらは睡眠時間を惜しんでこの場に居るので手短にお話して頂けると助かるのですが…(圧)」
嫌な予感が当たらないことを願う…
「あぁ…!そ、そうだな。
えー、簡単に言うと、紗菜に婚約者候補が4人出来たってことだ。」
え…、?
コンヤクシャコウホ?どうゆう事…、
困惑と戸惑いが収まらなくて頭が回らない…
しかも4人って…、生き地獄みたいなものなのでは…!?
「ちょ、ちょっとどうゆう事ですか理事長…!私が男性恐怖症ということご存知ですよね?」
私は重度の男性恐怖症で、触れられただけで蕁麻疹が止まらなくなるし、吐き気がする。
お父様と仁兄以外とは近付くだけでも憎悪が止まらなくなって、口調が強くなってしまっている様な状態なのに…何で…、
「俺もこんな可愛い娘を男に渡すなんて絶対、絶対嫌だったんだが…華凪がなぁ…。」
え、お母様が…?
「華凪が紗菜の男性恐怖症を心配していて、俺に内緒で進めていた事らしいんだよ…」
お母様…そんなに心配してくれていたんだ…、
そっか…お母様が言うなら仕方がないかな…
「…ってなるかぁ!!!」
「ひぇっ…!!」
いくらお母様の気遣いだとしても、私は断固拒否する…!
「というか何でそもそもの4人何ですか…!?婚約者候補なんて1人で良いですよね?」
「そ、それは…面白そうだから☆って言ってたような…」
あの馬鹿お母様……!!
やっぱりそういう事だと思ってましたよっ…
「私は断固拒否しますっ!
その婚約者候補?さん達には悪いけどお断りしといて下さい。ではっ!」
くるりと体を回し、ドアまで向かう
よし…、これで私の平穏な日々が守られていってー
「いやぁ…それは無理じゃないかなぁ…、」
え…?
「…それはどういう事ですか?」
意味深な言い方をするお父様に冷や汗が止まらない。
「だってその婚約者達明日編入してくるし…、それに寮も紗菜と同じのVIPルームだからさぁ…。」
「はぁ…!?」
脳の処理が追いつかない…
今日は驚いでばかりだ…、
「明日編入って、どういう事ですか…?」
あまりにも急過ぎなのでは……?
「え、噂聞いてなかった?結構広まってると思うけど…、」
「え、そんなこと聞いてなーー、」
いや、ちょっと待って…どこかで聞いたような…
ーー「ねぇねぇ、この学園に編入生が4人来るって知ってる?」
ーー「え〜!そうなの…!?初めて聞いた。」
あぁ…、聞いてた…。
「…その様子だと聞いてたみたいだね。
んーまぁ、そういう事だから明日から頑張ってね紗菜。」
そう言ってニコッと笑うお父様…いや、理事長。
いつもは何とも思わないその顔も今では凄く憎らしく映る。
「うぅ…わ、分かりました。でも、すぐ婚約者候補さん達を追い出してみせます…!」
絶対に1週間以内で追い出してみせる…、
この時私は知らなかった、想像してる何倍もの厄介な影が近づいていることを…