無茶ぶり王子の侍女を辞めさせられて、外の世界に出たら滅茶苦茶楽しい。

4

 魔道具のお店で働くことを決めたのは、私自身に魔力があるからというのもあるし、単純にそういう道具に興味があった。


 私が育った王城には、便利な魔道具が沢山あった。カシューム殿下が珍しいものを集めるのが好きだったからというのもあるけれど。
 ――私は魔道具について、知ってみたいとそう思った。



 これまでは必要にかられて、自分の為に学ぶことばかりだった。だけどこの学びは……私自身が学んでみたいとそう思ったことだ。



 いざ、働いてみると……正直言って迷惑をかけてばかりだ。
 私は魔道具というものについてそこまで詳しく知らない素人だから。
 だけどそんな素人の私の失敗を周りは許してくれる。一度失敗しても、次に同じ失敗をしないように出来ればいいとそんな風に笑ってくれるのだ。


 カシューム殿下は最初から私が出来なかったらお怒りになられた。やり方を教えてくれることなどもなく、ただ私が思った通りに動けないことに怒っていた。
 ここではそうではないのだなと思うと、不思議な気持ちになる。



 本当にこの街の人達は皆が皆、優しい人たちばかりだ。
 私の失敗を笑って許してくださる人たちを見ると、私はもっと頑張ろうとそういう気持ちになる。
 カシューム殿下の元に居た時は、怒られたり、罰を与えられないように――そればかり考えてただ必死だった。でもここではそんな心構えを持つ必要は全くない。
 食事を抜かれたりすることもなく、周りの人たちは優しくて、お金もちゃんともらえる。
 見習いで、役に立たない私がこんなにもらっていいのだろうかとおどろいた。



「セラムが役立たずなんてそんなことないわ。貴方は気配りが出来て、細かいところに気づいてくれるでしょう? 魔道具に関しては確かにまだ知らないことが多いかもしれないけれど、貴方は意欲的に学ぼうとしていているでしょう? それにこういうのは先行投資なのよ。職人を育てることも私達にとって重要だから」


 そう言って微笑んだのは、この魔道具店で店長をしているリドロさんだ。



 女性の身で、魔道具店を切り盛りしている凄い人だ。こういう魔道具の職人の世界は男性の方がずっと多いらしい。だから魔道具職人としてはたらきだした当初は大変だったと語っていた。
 魔道具について詳しく知らない私が魔道具のお店で働けるのも、リドロさんのような人たちがずっと魔道具職人の世界で頑張ってきたおかげなのだと思う。


 まだ女性の数は少ないけれど、少しずつ女性の魔道具職人も増えてきているのだって。
 そういうの凄く良いことだなと思う。性別関係なしに働きたい人が働けるようになった方がきっといいのだろうとそんなことを思う。



 私は使えないだとか、役立たずだとか……そんな風にずっと言われてきた。
 カシューム殿下もそうだし、周りだって私に対してそういう扱いをするのは当然だとそういう感じだった。



 だけどなんだか……褒めてくれる人ばかりで、自分のことを凄いのではないかと少し勘違いしてしまいそうになる。周りにいるのが優しい人ばかりだから、私がやる気を出すように褒めてくれるようにしているだけかもしれないけれど……。
 でも幾ら褒めてもらえたとしても、優しくしてもらえるとしてもそんな風に勘違いしてはいけないとは思っている。



 魔道具のお店で働くにあたって、自分の魔力を改めて測定してもらった。
 私は魔力は持っていても魔法は習ったことがない。ただ自分の身を守るために魔力をこうつかったらいいのでは? と活用していただけだ。


 体内の魔力を使って、様々な形で体現する魔法という力は使える人は少ない。単純に操作が難しいというのもあるし、基本的に魔法を使えるだけの魔力を持つ人はそこまで多くないらしい。
 それに魔法はきちんと習った上で使わないと、暴走を引き起こしたりというのがよくあるらしい。
 実際に私もカシューム殿下の傍に控えていた時に、そういう話を聞いたことがある。



 子供が大暴走を起こしてしまい、悲しいことに命を奪うしかなかったといった例もあるらしい。手遅れになってしまった場合は、そういう風な対応をしないとどうしようもないのだって。
 魔力測定をした私は、魔法を使えるだけの魔力があるらしいと分かった。というか一般的に見てその魔力量はとても多いのだって。



 私の魔力を図ってくれた人には、「貴族の血でも継いでいるのか?」と聞かれもした。
 私にそんな血は流れていないと思う。最も記憶がないから、実際の出自は分からないけれど……。



 でもこれだけ魔力を持っていることは魔道具職人として働く上ではとても良いことなのだって。
 自身の魔力を活用する方法もリドロさんが教えてくれることになった。
 あとは魔法についても、これだけ魔力があるなら習った方がいいってそんな風に言われた。



 街に住まう魔法使いの方が無償で教えてくれると言ったけれど、流石にそこまで甘えるわけにもいかないのでお金を払って教えてもらうことにした。
 働き始めて、きちんと自分のお金があるのだからそういうのは使わないと!



 そういうわけで最近の私は色々大忙しだ。
 魔道具のお店で働きながら、魔法を習ったり、後は時間があるときはちょっとした冒険者ギルドの依頼を受けたり、街を探索してみたことない景色を沢山見に行く。


 そういう暮らしをしている。

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