本読む君

居残り勉強

◯教室(日替わり・昼休み)

ゆうみの机の周りに女子生徒が集まっている。

女子生徒1「ねぇ、大丈夫?その足」
ゆうみ「(笑って)大丈夫だって〜。こんなのすぐに治しちゃうのが私だからね」
女子生徒2「球技大会も近いのに、ゆうみいないと勝てないじゃん」
ゆうみ「綾だっているし、うちのクラスで絶対トロフィーゲットだからね!」
女子生徒3「あ〜、まじでうちのクラスにも高身長なやついればまだ勝てる見込みあるのにな〜」

高身長と聞き、りょうのことを思い浮かべるゆうみ。

ゆうみM「あいつのことは、考えない!」
女子「ん?なんかあった、にやけてるけど」
ゆうみ「え?別に何もないよ」

チャイムの音「キーンコーンカーンコーン」

女子生徒1「やばっ。次の授業、移動だよ」
ゆうみ「みんな先行ってて。私、こいつのせいで遅いから(松葉杖を見る)」
女子2「オッケー。ゆうみのこと先生に言っとから、ゆっくり来な」
ゆうみ「せんきゅっ」

女子生徒たちが走って教室から出ていく。
ゆうみ、松葉杖を使いながら歩いて教室を出ていく。

◯廊下 (同)

通りかかった隣の4組の教室を覗くゆうみ。
誰もいない教室の窓側の席、一番後ろの席に座りながら本を読んでいるりょう。

一瞬、りょうに見惚れるゆうみ。
ゆうみの後ろから走ってくる足音がする。

男子生徒の声「おい、りょう!何やってんだよ、こんな所で。音楽の授業だろ」
りょう「…」

何も言わずに本を読むのを止め、教室から出てくるりょう。

ゆうみ「やばっ」

すかさず松葉杖を使い、歩き始めるゆうみ。
ゆうみの後ろを通りかかるりょう。
りょうのことが気になり、後ろを振り返るゆうみ。
ゆうみの目には、反対方向に歩いていくりょうの後ろ姿がうつる。

ゆうみM「なに意識しちゃってんだろ、私…」

再び歩き始めるゆうみ。
後ろを振り返り、ゆうみの後ろ姿を見つめるりょう。

◯下駄箱 (放課後)

誰もいない下駄箱。
外からは、部活動の声が聞こえている。
1人で靴を出して下校しようとしているゆうみ。

ゆうみ「はぁ〜帰るか。部活も来るなって言われてるし」

数冊の本を運び、下駄箱の前を通りかかるりょう。
ゆうみとりょう、お互いの目が合う。
咄嗟に目を逸らすゆうみ。

りょう「帰んの?」
ゆうみ「え?う、うん。勉強しなきゃだし」
りょう「やらないでしょ」
ゆうみ「?」
りょう「帰ってもどーせやらないでしょ。勉強」

何も言い返せないゆうみ。
ゆうみの方へ寄ってくるりょう。
この前のこともあり、キスされると思って咄嗟に目を瞑るゆうみ。

りょう「何してんの。しないよ、こんなとこで」

恥ずかしさで顔を赤らめるゆうみ。

りょう「…。図書室きな」
ゆうみ「ん?」
りょう「図書室にいるから」

それだけ言いのこし、その場から立ち去るりょう。
その場に突っ立つゆうみ。

ゆうみ「え…。何それ。私、帰るのに」



靴を下駄箱に戻し、図書室へ向かって歩き始める。

ゆうみM「何やってんの、私。なんで図書室向かってんのよ」

◯図書室(同)

ドアを開け、図書室内に入ってくるゆうみ。
カウンターにはりょうの姿。

りょう「来たんだ」
ゆうみ「別にあんたが気になって来たわけじゃないから。勉強するためだから」
りょう「…あっそ」



机の上に教科書やノートを広げ、机に突っ伏して寝ているゆうみ。



目がさめるゆうみ。

ゆうみ「うわっ。寝てた」

ゆうみが顔を上げ、前を見ると目の前の座席で本を読んでいるりょう。

りょう「やっと起床か」
ゆうみ「ちょっと、何で起こしてくれないの!これじゃあ全然、勉強進んでないから!」
りょう「テストは絶望的だね」
ゆうみ「は?そういうあんたは本ばっか読んで、テスト勉強しなくていいわけ?」
りょう「うん。毎回、学年トップだから」
ゆうみ「え!?ほんと!じゃあ、私に教えてよ」
りょう「まぁいいけど」
ゆうみ「ラッキー‼️」



ゆうみに勉強を教えるりょう。
2人きりの図書館で勉強する2人の姿。



りょう「はい。今日はここまでね」
ゆうみ「うわ〜。なんか私、頭良くなった気する」

伸びをするゆうみ。

ゆうみ「ありがとう!」
りょう「バカすぎるから、明日からも俺と居残り勉強な」
ゆうみ「は?バカって…」

ゆうみM「え?これから毎日一緒に居残んの?」

りょう「放課後、図書室しゅーごーだから」

先生が図書室に入ってくる。

先生「あ!いたいた、沢田くん!ちょっと頼みたいことあるから、来てちょーだい」
りょう「はい、今行きます」
りょう「(ゆうみに対して)じゃあ。待ってるから」

1人図書室に残されるゆうみ。
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