夏色物語
教室の戸が開く音は
生徒達の騒ぐ声と
急いで席に座る音で
掻き消された。
「はい、みんなー。
今日は…」
「せんせー、
転校生がくるんですよねえ?」
誰かが教師の声をさえぎる。
みんなの目は期待に
満ち溢れていた。
そりゃそーだ。
だってココに引っ越す人なんて
滅多にいないのだから。
「ったく、情報がまわるのが
早いわねえ。そ、みんなの
言うとおり、今日から新しく
みんなの仲間になる人が
来ています」
新しく仲間になる人。
小学生以来、
こんな子供じみた言葉を
聞くのは久しぶりだ。
私は転校生に特になんの
期待もせず窓の外に広がる青い海を
眺めた。