スイーツ王子は、お菓子のようには甘くない!
○時間経過 透夏の家(夜)
母「あら、もうこんな時間!」
時計を見ると針は七時過ぎをさしている。
母「朔夜くん、良ければご飯食べていく?」
朔夜「え。いいんですか?」
母「もちろん! 腕によりをかけてつくるわね!」
気合を入れる様に力こぶをつくる母だったが、透夏が慌てて止めに入った。
透夏「まって。お母さん。お母さんは座ってて。私が作るから」
母「あら。朔夜くんにいいところを見せたいのかしら?」
透夏「それでいいから。座ってて」
いそいそと立ち上がる透夏が、ポカンとしている朔夜に苦い顔で耳打ちをする。
透夏「うちのお母さん、料理下手なの気がついてないの。食べられないことはないんだけど、美味しくもないって言うか……味覚が、ちょっと……」
朔夜「お、おう」
透夏の料理の腕が上がったのは母に代わり料理をしていたから。と察した。
朔夜「手伝おうか?」
透夏「ううん。お客さんにさせられないよ。それよりもお母さんの相手しててくれるかな」
母を指さすと、再びアルバムを眺めているところだった。
透夏「お母さん、ああなると長いのよね。適当に流してくれていいから」
朔夜「……あはは」
キッチンに向かう透夏を見送り、朔夜も母の元へ向かう。
アルバムに載っている写真はどれも楽しそうなものばかりだった。
朔夜「透夏さんは、昔は笑顔が多かったんですね」
母「そうね。あの子はよく笑う子だったわ。でも、旦那が亡くなってからは、笑わなくなっちゃった。きっと気にしているのね」
朔夜「?」
母「あの子、あの人が亡くなったのを自分のせいだと思っているから」
朔夜「え……」
母は悲しそうに微笑むと、透夏の過去を口にする。