スイーツ王子は、お菓子のようには甘くない!

 (透夏の過去回想)


 その日は透夏の八歳の誕生日だった。
 前々から家族で星を見に行こうという予定があり、夜の外出が初めてだった透夏はテンションが上がっていた。


 幼い透夏「ねえ、早く行こうよ!」
 父(水藤(れん))「ちょっと待ちなさい。落ち着きなさいって」

 幼い透夏「やだ! 早く! 早く!」
 父「まだ母さんが準備できていないでしょう?」


 幼い透夏はふくれっ面になり、父の目が家の中に向いている時に一人で外に出て行ってしまった。
 気がついた父は慌てて追いかけて捕まえる。


 父「こら透夏! 一人で歩くと危ないだろう!」
 幼い透夏「私もうお姉さんなんだから、大丈夫だし!」

 父「そう言うことじゃない! さ、戻るよ」


 幼い透夏は叱られたことに腹を立て、父の手を振りきって走り出してしまった。
 くしくもそのとき、暴走車が歩道に突っ込んで来たのが見えた。


 父「透夏!!」

 ――キキィィィイ、ドンッ!


 (暗転 回想終了)


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