スイーツ王子は、お菓子のようには甘くない!

 ○透夏の家(オープンキャンパスの日から数日が過ぎ、付き合いだしてもうすぐ一か月)
 透夏は父の仏壇(ぶつだん)に手を合わせて祈っている。


 透夏(お父さん。私、ずっとお父さんみたいになりたかった。その気持ちは今も間違いなくあるよ。でも前までとは今は少し違うみたい)


 朔夜に言われたことを思いだす。


 『あんたはあんたらしく』


 透夏(ふしぎなんだけどね、最近、天宮くんのことが気になって仕方がないんだ。たぶん、大事なことを思いださせてくれたからだと思う。……なんだけど)


 朔夜にどう見られているのかが気になるようになった。
 そして視線が合うと恥ずかしくて目を見ていられなくなった。


 透夏(なんだかドキドキするんだよね。これって……)


 自分の心境の変化に戸惑(とまど)う。


 母「それはね! 恋よ!!」
 透夏「うわあ!?」


 祈っているところに母が乱入。


 透夏「お母さん!? いきなり入ってきて何言ってるの!?」
 母「何やら甘酸っぱい気配を感じて!」

 透夏「エスパーなの!? 意味わからないんだけど!」
 母「あらあら~いいじゃない。相手は? 朔夜くん?」

 透夏「あーもー! うるさいうるさい!」
 母「聞かせてよ透夏~!」


 母を撒き、自室へ。


 透夏(もう! お母さんったら、これが恋、なんて……)


 透夏「う~!」


 クッションに顔を押し付けて呻く。
 心当たりしかないし、自覚(じかく)し始めていた。


 透夏(これってやっぱり、そういうこと!?)


 『あんたが好きだ。透夏』


 透夏「わ~~~!!」


 好きだと言われたことを思いだし、クッションを持ったまま転がる。
 そこにラインの通知が来る。


 通知画面には天宮くんの文字。
 朔夜のおかげで母とも話し合え、専門に行くことも賛成されたこと、そして学費も貯めていてくれたということを報告していた。それに対する返信。


 天宮くん:【よかったじゃん。頑張ったな】


 簡潔な文章だけど、嬉しくなる。


 透夏(……これが本当に恋、なのかな)


 確かめたい気もするけれど、いろいろありすぎてまだ気持ちが追いついていない。
 悩んでいると再び通知が来る。


 天宮くん:【来週末、花火大会あるんだって。ちょっと遠いけど、いかねえ?】


 透夏「! そうだ!」


 花火大会に行けば、この気持ちが何なのか、確信が持てるかもしれない。と思った透夏、すぐに返信を送る。


 透夏:【行きたい!】
 天宮くん:【おー。じゃあ決まりな。迎えに行くわ】


 嬉しそうにクッションを持ったまま転がる透夏だった。


< 24 / 74 >

この作品をシェア

pagetop