スイーツ王子は、お菓子のようには甘くない!
○透夏の家(オープンキャンパスの日から数日が過ぎ、付き合いだしてもうすぐ一か月)
透夏は父の仏壇に手を合わせて祈っている。
透夏(お父さん。私、ずっとお父さんみたいになりたかった。その気持ちは今も間違いなくあるよ。でも前までとは今は少し違うみたい)
朔夜に言われたことを思いだす。
『あんたはあんたらしく』
透夏(ふしぎなんだけどね、最近、天宮くんのことが気になって仕方がないんだ。たぶん、大事なことを思いださせてくれたからだと思う。……なんだけど)
朔夜にどう見られているのかが気になるようになった。
そして視線が合うと恥ずかしくて目を見ていられなくなった。
透夏(なんだかドキドキするんだよね。これって……)
自分の心境の変化に戸惑う。
母「それはね! 恋よ!!」
透夏「うわあ!?」
祈っているところに母が乱入。
透夏「お母さん!? いきなり入ってきて何言ってるの!?」
母「何やら甘酸っぱい気配を感じて!」
透夏「エスパーなの!? 意味わからないんだけど!」
母「あらあら~いいじゃない。相手は? 朔夜くん?」
透夏「あーもー! うるさいうるさい!」
母「聞かせてよ透夏~!」
母を撒き、自室へ。
透夏(もう! お母さんったら、これが恋、なんて……)
透夏「う~!」
クッションに顔を押し付けて呻く。
心当たりしかないし、自覚し始めていた。
透夏(これってやっぱり、そういうこと!?)
『あんたが好きだ。透夏』
透夏「わ~~~!!」
好きだと言われたことを思いだし、クッションを持ったまま転がる。
そこにラインの通知が来る。
通知画面には天宮くんの文字。
朔夜のおかげで母とも話し合え、専門に行くことも賛成されたこと、そして学費も貯めていてくれたということを報告していた。それに対する返信。
天宮くん:【よかったじゃん。頑張ったな】
簡潔な文章だけど、嬉しくなる。
透夏(……これが本当に恋、なのかな)
確かめたい気もするけれど、いろいろありすぎてまだ気持ちが追いついていない。
悩んでいると再び通知が来る。
天宮くん:【来週末、花火大会あるんだって。ちょっと遠いけど、いかねえ?】
透夏「! そうだ!」
花火大会に行けば、この気持ちが何なのか、確信が持てるかもしれない。と思った透夏、すぐに返信を送る。
透夏:【行きたい!】
天宮くん:【おー。じゃあ決まりな。迎えに行くわ】
嬉しそうにクッションを持ったまま転がる透夏だった。