スイーツ王子は、お菓子のようには甘くない!

 ○祭り会場(屋台を楽しんでいる様子をダイジェストで)

 ・かき氷、焼きそば、ラムネなどはシェアしている
 ・射的(しゃてき)、輪投げ、型抜きなどで競いながら遊んでいる
 ・ノリでお面を買う


 透夏「はあ~~! 遊んだね~!」
 朔夜「そうだな。っていうかあんた、射的うますぎ。びびったわ」

 透夏「そういう天宮くんは、型抜き早すぎて笑っちゃったよ~。手先器用(きよう)なんだ?」
 朔夜「まあ、一応な」


 さすがに満喫(まんきつ)しすぎて疲れたので休憩(きゅうけい)スペースへ向かう。


 透夏「……あれ?」
 朔夜「どうした?」

 透夏「見て。あの子迷子かな?」


 その途中(とちゅう)の木の後ろで泣いている男の子を見つけ、話しかける。
 見た所小学校低学年くらいの子。


 透夏「ボク、どうしたの? 大丈夫?」
 男の子「ヒック……うぅ……」

 透夏「お父さんか、お母さんは?」
 男の子「うわああん」


 透夏の言葉に余計(よけい)に泣き出す男の子。
 迷子センターに連れて行こうにも、男の子は(うずくま)って動こうとしない。


 透夏「困ったな……」


 透夏は子供の相手が得意ではなく、途方(とほう)にくれる。
 すると朔夜が男の子の目線に合わせるようにしゃがみ込み、お面を見せる。


 朔夜「君、ホゴネイジャー好き?」


 朔夜の優しい声色に顔を上げた男の子は、お面をじっと見つめている。
 朔夜はお面をつけてホゴネイジャー(地元のご当地ヒーロー)、リーダーレッドの真似(まね)をする。


 朔夜「リーダーレッド、参上(さんじょう)! オレが来たからにはもう大丈夫だ、少年!」


 男の子は戦隊(せんたい)ものが好きらしく、朔夜のモノマネにキラキラとした目を向けた。
 一方の透夏は、意外と似ているモノマネに吹き出しそうになるのを我慢(がまん)して震えている。


 男の子「お兄ちゃんすごい! リーダーレッドだ!」
 朔夜「そうだぞ。泣き止んで偉いな。一緒に来ていたのはお母さんか? お父さんか?」

 男の子「お父さん!」
 朔夜「そうか。なら迷子のお父さんを一緒に探そうな」

 男の子「うん!」


 いろいろとツッコミたい衝動(しょうどう)にかられる透夏だったが何とか(こら)え、男の子を真ん中に手をつないで迷子センターへ向かう。
 迷子センターにつくとすぐに男の子の父親が現れた。


 子供のお父さん「晴樹(はるき)!」
 男の子「お父さん!」

 お父さん「どこ行っていたんだ。心配したんだぞ」
 男の子「ごめんなさい……」


 お父さん「本当にありがとうございます! なんとお礼をしたら……」
 朔夜「いいえ。それほどでも。でも人が多いですから、ちゃんと手をつないであげてくださいね」


 父親は朔夜たちに気がつくとしきりにお礼を言って去っていった。
 去り際に男の子が手を振り、振り返す朔夜と透夏。


 男の子たちを見送ると朔夜たちも歩き出す。


 透夏「よかったね。すぐに見つかって」
 朔夜「そうだな」

 透夏「天宮くん、子供あやすの上手なんだね。驚いちゃった」
 朔夜「ん。まあな。一人でいるときの不安はよくわかるから……」


 ちょっと照れくさそうに話す朔夜の横顔を盗み見る。
 なんだかんだいって優しい性格をしている朔夜にキュンとした。


 そのとき空に花火が打ちあがった。
 歓声(かんせい)が上がり、透夏も思わず立ち止まり空を見上げる。


 透夏「わあ!」
 朔夜「……始まっちまったか」


 つぶやいた朔夜に手を取られる。


 朔夜「透夏。こっち」
 透夏「え?」


 透夏は朔夜に手を引かれ、会場を後にする。

< 26 / 74 >

この作品をシェア

pagetop