スイーツ王子は、お菓子のようには甘くない!
第7話 お祭りデート2
○前回の続き
朔夜の頬に無意識に口づけしてしまった透夏が、真っ赤になりながら慌てている。
透夏は自分のしたことに一番驚いている様子。
朔夜「……今」
透夏「ち、違うの! これは……!」
自覚していくにつれて顔から熱が出ているかのようにゆで上がっていく。
まともに朔夜の顔が見られず、パニックのまま逃げ出してしまう。
朔夜「あっ! と、透夏!?」
走り去っていく透夏の背に手を伸ばすも、朔夜自身、状況が飲み込めていないので引きとめられない。
ぽつんと残された朔夜は次第に赤面し、しゃがみ込む。
朔夜「……っ、やられた!」
ぐしゃりと髪をかき上げ、耐えるような表情でつぶやく。
数秒後に上げた顔は複雑な表情だったが、目は獲物を追う獣のような爛々とした輝きを持っていた。
朔夜「待てって、透夏!」
朔夜には透夏を逃がしてあげるつもりはなかった。
(透夏視点)
透夏(私……なんてことを!?)
走りながら自分のしたことの重要性を把握し、顔の熱が収まらない。
キスしてしまったのは想いが溢れてしまったからで、本当はするつもりなんてなかった。
けれど朔夜の顔を見ていたら、自然と動いてしまっていたのだ。
透夏「っ」
酔っぱらい「うわ」
前も確認せずに走っていたら、ほどよく酔っ払った人にぶつかってしまった。
酔っ払いは二人で、なかなかにガラが悪い。
透夏「す、すみませ」
酔っ払い1「あーあーあー。ビール零しちまったじゃねーか」
酔っ払い2「おいおい~。まだまだ飲み足りねぇってのによ~」
透夏「すみません! 前を見てなくて……」
酔っ払い1「ああ? そんだけで済ませるつもりじゃねぇだろうな?」
酔っ払い2「誠意をみせろって。なあ、姉ちゃん」
酔っ払いたちはにやにやと赤い顔で透夏を見て、肩に手を回す。
透夏「ちょっ!」
酔っ払い1「詫びの一つや二つ、受け取らねぇと済まさねぇよ?」
酔っ払い2「見た所、未成年か? じゃあ酒は買えねぇよなぁ。……なら他の方法で付き合ってもらわねーと」
透夏「ちょっと、やめて! 離して!」
酔っ払い1「っ」
身の危険を感じた透夏が拒否した時に酔っ払い男の顔をひっかいてしまう。
男はすぐに激高してしまった。
酔っ払い1「このアマッ!」
透夏「!」
酔いで善悪がつかなくなっている男、すぐに殴ろうとしてくる。
振り上げられた拳に目をつぶるが、痛みがやってこない。
代わりにドゴッという音だけが耳に届いた。
恐る恐る目を開けると、透夏の代わりに男の拳を受けた朔夜の姿が。
透夏「天宮くん!?」
朔夜は一瞬ぐらつくも耐え、口に滲んだ血をぬぐった。
朔夜「気は済んだ?」
下からねめつける様に見てくる朔夜からは殺気が放たれており、相当キレているのが分かる。
酔っ払いは朔夜の殺気に怯み、人が集まり始めているのに気がつく。
外野1「喧嘩?」
外野2「やだ、あのお兄さん殴られたよ」
外野3「警察呼んだ方がよくない?」
酔っ払い2「っ! そんなブス、こっちから願い下げだっつーの!」
酔っ払い1「いこうぜ」
酔っ払いたちは慌てて去っていった。