スイーツ王子は、お菓子のようには甘くない!

 窓を締めると、外にいた朔夜(さくや)に気がつく。


 透夏(王子様みたいな甘い笑み……。柔らかい雰囲気(ふんいき)……。あれくらい自然にほほえめていたら、怖がらせずに過ごせるんだろうな……)


 自分とは全く違う朔夜を見てため息を吐いていると、ドアが開いて同じクラス長の真村彰(まむら しょう)が確認にきた。

 真村彰:黒の短髪で、健康的に日焼けしたスポーツマンっぽい男の子。


 彰「あれ。まだいたんだ」
 透夏「真村くん。うん。さっき残っていた子たちを移動させたところ」

 彰「そっか。サンキューな。さすがはクラス長」
 透夏「それは真村くんもでしょう?」

 彰「まあな。ほら、鍵貰ってきたから早く行こう……って、なに見てたんだ?」


 透夏に近づく彰。
 朔夜に気がつくと「ああ」という顔になる。


 彰「女子ってああいう優男(やさおとこ)好きだよなー。水藤も、ああいうのがタイプ?」
 透夏「まさか。私とは別世界の住人だし」
 彰「ふーん。ま、水藤クールだしな」


 透夏の返事に、少し嬉しそうな顔をする彰。


 彰「にしても不思議だよな。なんだって御曹司様が誠海高校(うち)みたいに普通の高校に転入なんて……。しかも五月末っつー微妙な時期にさ」
 透夏「さあ……?」


 そう言えばなんでだろうと疑問を抱き、再び視線を外に向けると朔夜がこちらを向いているのに気がつく。


 透夏(えっ……? 目が、合った?)


 思わず顔を反らす。

 彰「おい、どうした? 早く行こうぜ」
 透夏「あっ、うん」

 再び外を見ると既に朔夜の姿はない。

 透夏(……まさかね)



 透夏のいる教室は三階。
 恐らく見間違いだったのだろう。透夏はそう結論付けると教室を後にした。

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