スイーツ王子は、お菓子のようには甘くない!

 ○学校、1-Aの教室(休憩(きゅうけい)時間)
 休みの時間に外から声が聞こえてきて見てみると朔夜の姿が。
 じっと見ていると朔夜も透夏に気がつき、爽やかに手をあげる。


 透夏「っ!」


 恥ずかしく思いつつも手を振り返すと、嬉しそうな笑みを浮かべられた。


 女生徒1「きゃー! みた!? あのスイーツ王子の笑み!!」
 女生徒2「見た見た! なになになに!? 王子ってあんな顔もできるの!?」
 女生徒3「ね! 前までしていた笑顔も素敵だったけど、あの笑みは愛しいって気持ちがのっかってるよね!?」


 女生徒たち「「「愛されてるね、水藤さん!」」」


 クラスの女子たちが二人のやり取りを見ていて、にやにやとほほえましい視線を送ってくる。
 透夏は恥ずかしさが天元突破(てんげんとっぱ)して、引っ込んでいく。


 女生徒1「あっ、まってよ水藤さん!」
 女生徒2「いろいろ話、聞かせて~!」
 女生徒3「逃がさないよ~!」

 透夏「ちょ、か、勘弁して!」


 今まで話さなかった生徒たちとも、最近は話すことが増えた(表情が昔の透夏のように豊かになったから)。
 今は前のように鉄仮面(てっかめん)とか呼ばれたり、怖がられたりはしていない。

 女子たちの(たわむ)れを、少し離れた場所で男子たちが眺めている。


 男子生徒1「おーおー。今日もやってんなぁ」
 男子生徒2「なあ(しょう)。水藤さんってあんなに笑うやつだったっけ?」

 彰「……なんで俺に聞くんだ?」

 男子生徒2「だってお前、水藤さんと同じクラス長だろ」
 男子生徒1「そーそー。このクラスで一番話してたのがお前だろ?」

 彰「……まあな」


 男子たちは冗談(じょうだん)交じりに笑い合っているが、彰は微妙(びみょう)な顔をしている。


 男子生徒1「って言うか水藤さん、笑うようになってから印象(いんしょう)だいぶ変わったよな」
 男子生徒2「あっ、わかる! ぶっちゃけ怖いっつーイメージだったけど、よく見ると美人だよな」

 男子生徒1「な。笑うと可愛いかも……? 恋は人を変えるっていうけど、あれ見るとよくわかるわー」
 男子生徒2「なー。オレも恋してぇ~」

 男子生徒1「なー。彰もそうだろ?」
 彰「……そうだな」


 彰は静かに透夏を見つめている。


 彰「水藤は前からしっかり者のいいやつだったよ。お前らが気がつかなかっただけで」
 男子生徒1「彰……お前」

 彰「なんだよ」
 男子生徒1「いや、酷いやつだなって」

 彰「うるせえよ」


 男子たちはお互いに小突き合って休憩時間が終わる。


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