スイーツ王子は、お菓子のようには甘くない!

 ○校門前(夕方。下校時間)
 一日を終えた透夏も下校しようと門を潜ると、いつもより人がざわざわとしていることに気がつく。


 透夏「……?」


 人の間から覗いてみると、違う制服を着た超絶美少女が立っていることに気がつく。


 透夏(うわ……! すんごい可愛い)


 おっとりとした愛らしい顔。平均よりも低い身長。腰まであるウェーブのかかった黒髪。そしてぴしりと伸びた姿勢。
 見た目だけで、どこか良いところのお嬢さんだと分かる。

 思わず見とれていると、ふいに美少女と視線があう。


 透夏(! え、ええ!?)


 美少女は真っ直ぐに透夏の方へと向かってくると、ニコリとほほえんだ。


 美少女「あの、朔夜っていますか?」
 透夏「……え?」


 なぜ朔夜の名が出てくるのかと戸惑(とまど)っていると、朔夜も校門へとやってきた。


 透夏「あ、天宮く……」
 美少女「あっ! 朔夜ー!!」


 朔夜に声をかけようとした透夏だったが、同時に美少女も声を挙げて朔夜へと小走りで寄っていく。


 朔夜「はっ!? おま、雪!?」


 朔夜も美少女のことを知っている風。
 しかも美少女が親し気に腕を組んでいるから、透夏は余計(よけい)困惑(こんわく)する。


 透夏「あ、天宮くん。その子は……?」
 朔夜「透夏。違うからな。これは、その……」


 気まずそうに目が泳いでいる朔夜。
 その間も美少女は朔夜の腕に抱き着いている。


 美少女「そうそう! 朔夜に伝えたいことがあったから、来ちゃった!」
 透夏「えっと……」


 美少女はそんな状態を知ってか知らずか、満面の笑みで透夏を見る。


 美少女「あっ、朔夜がいつもお世話になっております。わたし、朔夜の許嫁(いいなずけ)市嶋(いちじま)(ゆき)っていうの! よろしくね」
 透夏「…………は?」


 一瞬(いっしゅん)にして、空気が凍り付いた。



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