スイーツ王子は、お菓子のようには甘くない!
第9話 拗れていく関係
○前回の続き
朔夜の許嫁を名乗る美少女が突然やってきて、凍り付く校門前。
透夏「……い、いいなず、け?」
雪「うん、そうよ! ま、言っても親が決めた相手なんだけど」
雪と名乗った美少女は意味深な笑みを浮かべる。
雪「そう言う訳だから悪いんだけど、聞いてほしいことがあるから朔夜は借りていくねー!」
朔夜「ちょ、まて雪!」
雪「さ、早く早く~!」
朔夜「だから聞けって! ぐっ、力強いな!」
雪は興奮状態で朔夜の話すら聞かず、近くに止めていた車に押しこんで、あっという間に朔夜を攫っていってしまった。
透夏「……ええ?」
残された透夏はどうすることもできずに、ただ茫然としている。
透夏(許嫁って、あれだよね? 将来を誓いあっている相手ってやつ……)
そんな存在が朔夜にいた事実を受け入れきれない透夏、しばらくその場を動けない。
透夏(それじゃあ、私って……?)
もしかしたら遊ばれていたかもしれない、と嫌な方向に意識が向かってしまう。
彰「……あー。大丈夫か、水藤」
透夏「ぁ。真村くん……」
彰「大丈夫……じゃなさそうだな」
偶然通りかかった彰に声を掛けられる。
彰はガシガシと頭を掻くと、透夏の腕を引く。
彰「あんなの目撃したらそうなるだろうけど。……とりあえず、場所を変えようぜ。ここじゃあ視線がありすぎる」
透夏「あ……」
よく見れば、たくさんの人が興味深そうに透夏を見ていた。
あんな昼ドラのようなできごとがあれば、そりゃあ好奇の目を向けられるのは仕方がない。
彰はそれを遮るように体で透夏を隠しながらその場を後にした。