スイーツ王子は、お菓子のようには甘くない!


 何を言われたのか理解できずにいると、彰は静かに口を開く。


 彰「俺、ずっとお前を見てきたから分かる。口ではそういっているけど、今すごく傷ついているだろ」
 透夏「っ」


 図星(ずぼし)だった。

 彰「俺は、水藤に笑顔が増えたのが嬉しかった。クラスの奴らも、水藤を見直しているし、いいところを知ってくれるのは嬉しかったんだ。でも……」


 彰は苦しそうに胸を押さえた。


 彰「そうさせたのが俺じゃないことが悲しかった。……俺は、お前が好きだったから」
 透夏「……うそ」


 信じられないと目を見開く透夏に、力なく笑う彰。


 彰「だからお前が幸せそうに笑うのを見て悲しかったけど、笑わなかった水藤に笑顔を取り戻させた相手なら、いうことないかなって思っていた。この思いは伝えるつもりはなかったんだ。……でも」


 彰「お前の今の顔を見たら、黙ってられねぇよ」



 苦しそうに顔をゆがめて告白される。


 透夏(全然気がつかなかった……)


 そんな素振りを見せられた記憶がなかったのだ。
 だから動揺(どうよう)も大きい。


 彰「なあ。俺じゃダメか? 俺なら、あいつみたいにお前を傷つけない。ずっとお前だけを見る。約束する」
 透夏「そ、そんなことを、言われても……。私は、だって天宮くんと付き合っているんだし……」


 突然のことで頭が追いつかない。
 けれど、ここで茶化(ちゃか)してはダメだということだけは分かる。
 どうにか理解する時間を取ろうとそう口にすると、彰に肩を掴まれた。


 彰「お前、浮気をされていたんだぞ?」
 透夏「浮気、って」

 彰「これを浮気と言わずに何というんだ?」
 透夏「……」

 彰「だからお前が他の奴に目移りしても、文句(もんく)は言えない。いや、言わせない」
 透夏「で、でも……」


 彰の顔を見て冗談(じょうだん)なんかじゃないと分かった透夏、どうしたらいいのか分からず狼狽(うろた)えるしかできない。
 その反応を見ると彰はふう、と息を吐いた。


 彰「いきなりこんな風に言われて、お前も混乱するよな。悪い。……返事はいつでもいい。ただ、よく考えてほしい」
 透夏「?」

 彰「本当に水藤のことが好きだったら、隠してもいないはずだ」
 透夏「……!」


 透夏(……本当に、そう、なの?)


 彰の言葉が胸に突き刺さり、痛みを訴える。
 しばらくうつむいていると彰から声がかかった。


 彰「――送っていくよ。今日はいろいろあって疲れただろ?」
 透夏「……」


 返事もうまくできず、いつの間にか家まで送られる。
 その間も頭の中がグルグルと回っていて落ち着けないでいた。


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