スイーツ王子は、お菓子のようには甘くない!
(透夏のモノローグ)
それからどうやって帰ったのかは覚えていない。
とにかく必死で、気がついたら自分の部屋で泣いていた。
怖かったから、というのももちろんあった。
無理やり押さえつけられて、所有印を押されて、抗うことなんてできなくて……。
でもこの涙はそれだけで出てきたものではない。
強引なだけじゃなかった。
私よりも天宮くんの方が辛そうで、壁に置いた手が震えているように見えた。
まるで……私を求めて仕方がない。何をしてでも離してたまるものか、とでも言うように……。
あの顔を見ていたら、なんだか苦しくって、悲しくって。
どうして? どうして天宮くんがあんな顔をするの?
これじゃあ、私が悪いみたいじゃない。
隠し事をされていたのは私なのに……。
そんなことを考えていたら……。
(透夏のモノローグ終了)
○学校1-Aの教室(次の日の朝)
睡眠不足&泣いたせいで目が腫れている状態で登校した透夏がぐったりと机に伏している。
透夏(結局一睡もできなかった……)
もちろん目を冷やしたり、首の痕には絆創膏を張ったり、できることはしてきたが、それでも寝不足だけは隠せない。
注意力も散漫で、朝礼の連絡事項を聞き飛ばしてしまった。
山田先生「っということで、今日もしっかり励めよー。……あそうだ。水藤。この後職員室に来てくれ」
透夏「!?」
名指しされた透夏は何の用事で呼び出されたのか分からないまま、先生についていく。
透夏(……まさかバイトしていたことがバレた?)
透夏(それとも天宮くん関連で、何か?)
不安に思いながら職員室に入る。
山田先生「悪いな来てもらって。んで、コレ」
透夏「?」
山田先生「今日天宮が休んでな。連絡事項を持っていってほしいんだが」
透夏「え、ええ? どうして私が?」
山田先生「水藤、あいつの彼女らしいじゃん。天宮は家が特殊だからな。不用意に人を向ける訳にはいかないんだが……まあ、彼女なら許されるだろ」
透夏「は、はああ!?」
山田先生は割と適当な人だった。
透夏「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! 私、天宮くんの家なんて行ったこと……」
先生B「山田先生、お電話です」
山田先生「ああはい。……まあそう言うことで、頼んだぞ」
透夏「ちょっ!」
今顔を合わせる訳にはいかない透夏は断ろうとするも、タイミング悪く電話を取られてしまい、結局押し付けられる形になってしまった。