スイーツ王子は、お菓子のようには甘くない!
○朔夜の家(翌日)
朝日が昇り初め、部屋の中をうっすらと照らしだす。
朔夜「……ん。あれ……オレ……」
目を覚ました朔夜はだるい体をゆっくりと起こした。
テーブルを見ると薬とペットボトル、そしてタオルを浸した桶が置いてあった。
朔夜「……」
おぼろげな記憶を思いだす。
朔夜(……確か、誰かが、看病を……っ!)
朔夜の中で看病をしていたのが透夏だったことがつながると、勢いよく立ち上がった。
朔夜の部屋には姿は見当たらない。
それならリビングかと思い慌てて移動すると、ソファでタオルケットに包まって眠る透夏を見つけた。
朔夜「……夢じゃ、なかったのか」
そのことにホッとする。
自分を疑っている状態のはずなのに看病をして、傍にいてくれた。
それに気が付いたとき透夏への愛おしさがあふれだす。
透夏「ん……」
朔夜「!」
物音に気がついた透夏はゆっくりと目を開いた。
透夏「……」
朔夜「……」
透夏「……朔夜くんだ」
朔夜「!」
寝ぼけていた透夏はまどろみながらふにゃりと笑った。
透夏「私ね……覚悟、できたんだぁ」
朔夜「覚悟?」
透夏「ん。……ちゃんと現実と向き合うって。例え……フラれることになっても……」
朔夜「! 透夏、オレは……!」
透夏「…………ん?」
透夏の言葉に焦りをにじませた朔夜が声を張ると、透夏が覚醒して目を大きく見開く。
透夏「さ、朔夜くん!? なんでここに……って、そっか。泊まらせてもらったんだった」
状況を思いだした透夏は勢いよく起き上がる。
透夏「ごめん。一応許可は取ったんだけど、天宮くん意識もうろうとしていたみたいだから覚えていないよね?」
朔夜「いや、それは全然」
透夏「って言うか天宮くん、体はもういいの?」
朔夜「あ、ああ。だいぶ楽になった。……そうだ、看病してくれたんだよな。ありがとう」
透夏「ううん。私が勝手にやったことだし」
朔夜「それでも嬉しかったから」
透夏「……そっか」
いつになく素直にほほえむ朔夜にきゅんとする透夏。
朔夜「……なあ。さっきの話だけど」
透夏「さっき……?」
朔夜「覚悟ができたって」
透夏「!」
透夏は寝ぼけていたときに言ったことを思いだして青くなっていく。
朔夜「……フラれるって思ってるの?」
透夏「……そうなるかもって」
朔夜「透夏の気持ちは?」
透夏「私、の?」
朔夜は透夏の目線に合わせてしゃがむ。
朔夜「この際だから言っておくけど、オレはあんたと別れるつもはない」
透夏「え? で、でも」
朔夜「婚約者のこと、だろ?」
透夏はだまって頷いた。
朔夜「初めに説明しておかなかったオレが悪いよな。不安にさせて、本当にすまない。全部話すから、透夏が納得するまで話すから。……だからどうか、オレの話を聞いてくれないか」
苦しそうに眉を下げた朔夜に、透夏はごくりと息を飲みこみ恐る恐る頷く。
朔夜「――ありがとう」
ほっとした顔をした朔夜は透夏の隣に腰を下ろした。