スイーツ王子は、お菓子のようには甘くない!

第12話 真実は……?


 ○前回の続き
 インターフォンに映し出された(ゆき)の姿を眺める二人。


 透夏(とうか)「……あの子」
 朔夜(さくや)「…………はあ」


 映っていたのはカモフラージュ許嫁(いいなずけ)だという雪。
 カモフラージュだと言っていたはずなのに家にまで押しかける雪に、透夏は疑問と不安が増していく。


 透夏「……」
 朔夜「大丈夫。やましいことはないから安心して。ちょうどいい。はっきりさせるから」


 透夏のモヤモヤを察知(さっち)した朔夜は透夏を安心させるような声色でそう言うと、インターフォンで対応する。


 朔夜「……本当にタイミングが悪いな、雪は」
 雪『開口一番(かいこういちばん)なに?』

 朔夜「ちょうどいい。さっさと上がってこい」
 雪『は~? むかつく言い草~。それがせっかく書類をもってきて……』


 朔夜はもう一度ため息をつくと、雪が何かを言っているのにインターフォンを切ってしまう。


 透夏「え、っと。だ、大丈夫なの?」


 思っていたような対応ではなかったことに安堵(あんど)しつつも、あんな対応で大丈夫なのかという不安に変わる。


 朔夜「大丈夫だ。あいつにはああいう態度(たいど)しか取ってない」
 透夏「……」


 それはそれで大丈夫ではないのでは、と思うも言葉を飲み込む。
 少しすると玄関(げんかん)のチャイムが鳴った。

 朔夜が開くと、そこには怒った顔の雪が立っていた。


 雪「ちょっと朔夜! わたしまだしゃべってたのに切るなんてヒドいじゃない!」
 朔夜「どの口が言ってんだか。いつもあんたがやってる事だろ」

 雪「はあ~!? わたしがいつそんなことしたっていうのよ!」
 朔夜「自覚(じかく)がないとは恐れ入る。つかさっさと入れ。虫がくる」

 雪「誰のせいだと……」


 文句(もんく)を言いながらも入ってくる雪が透夏の姿を見つけると、ぴしりと固まってしまった。
 そしてみるみる笑顔になっていく。


 雪「あなただったのね! 朔夜の好きな人っていうのは!」
 透夏「え!?」


 雪は素早く透夏の手を取り、ぶんぶんと振る。
 思っていたリアクションとだいぶ違う反応をされた透夏は困惑(こんわく)を隠せない。


 雪「会えて嬉しいわ! わたしは市嶋(いちじま)(ゆき)っていうの! 朔夜に恋人ができたって聞いたから会ってみたいと思っていたの!」
 透夏「え、ええと。それは婚約者だから牽制(けんせい)しようとか、そういう……?」

 雪「え?」


 雪はきょとんとして笑い出した。


 雪「あははは! 違う違う。全然そんな感じじゃないの。って言うか朔夜、あれだけ大口叩いておきながらまだ誤解(ごかい)されたままじゃない。おもしろい~!」
 朔夜「うるせぇ。もとはと言えば雪のせいだろうがっ!」

 雪「人のせいにしないでよ! 初めに説明しておかなかった朔夜の自業自得(じごうじとく)なんだから!」
 朔夜「ぐっ」


 雪は朔夜を叩きながら笑い続け、朔夜は苦い顔のまま黙り込む。
 恋人や婚約者のような甘い雰囲気(ふんいき)はなく、どちらかというと気心(きごころ)の知れた悪友(あくゆう)のような様子に透夏は首を(かし)げた。


 透夏「え、えっと」

 雪「ああ、そうだった。この間はごめんなさいね。まさかあなたが朔夜の恋人だとは思わなくて、勘違いされるようなことをしてしまったわ。私と朔夜は許嫁っていう設定だけど、表向きだけだから。心配しなくてもわたしがこいつのことを好きになる要素なんて一つもないから、安心して!」

 透夏「え、ええ?」


 何がどうなっているのかがイマイチ理解できずに、隣でコメカミを抑えていた朔夜を見ると救いの手が差し伸べられた。


 朔夜「透夏が困ってるだろうが。いい加減、奥に進め」
 雪「あ、そうだった。ここまだ玄関だったね。ここじゃなんだし、ソファにでも座って話そうね~!」

 朔夜「なんであんたが仕切ってんだ……」
 雪「細かいことは気にしないの!」


 押し切られてリビングへ移動。
 なぜか三者面談のような形になる三人(つかれた顔の朔夜、困惑しきった透夏、ニコニコ全開の雪)。


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