スイーツ王子は、お菓子のようには甘くない!

 それから誠二郎と雪は手を振って出ていった。


 透夏「……なんだか(あらし)の様な人だったなぁ」
 朔夜「ほんっと、あいつが(から)むとろくなことにならねぇ」

 透夏「あ、はははは……」


 げっそりとした朔夜に苦笑いをこぼす。


 透夏「でも、すてきな人だったよ」
 朔夜「そうか?」

 透夏「うん。二人とも、幸せになってくれるといいね」
 朔夜「それは、まあそうだな」


 朔夜は不思議(ふしぎ)そうに首を傾げていたが、透夏にとっては本心を言いあえる相手は少しだけ(うらや)ましかった。


 朔夜「……あー。それで……雪とオレとの関係は分かってもらえたか?」
 透夏「……うん」

 朔夜「悪かったな。先に伝えていなくて……」


 気まずそうに頬を掻く朔夜にクスリと笑う。


 透夏「もういいよ。二人の間には何もなかったんでしょ?」


 勢いよく頷く朔夜にもう一度笑う。
 雪の話からも、朔夜の話からも、透夏が大切に思われていることは感じ取れた。
 だからもう不安はない。


 心配が晴れた透夏は久しぶりに心から笑った。


 朔夜「……透夏。抱きしめてもいいか?」
 透夏「……うん」


 頷けばぎゅっと抱きしめられる。


 朔夜「――オレは透夏しか見ていない。これまでも、これからも。不安にさせてしまったことはなかったことにはできないけど、これからは不安にさせないように、オレの気持ちを伝え続けるよ」


 上から心地よい低音が降ってきて、温かさに頬を寄せる。
 ドクンドクンという、少し早い鼓動(こどう)が聞こえ、眼を閉じた。


 朔夜「もう隠し事はしない。でももし不安に思うことがあったら、いつでも、なんでも聞いてくれ」
 透夏「……うん。もう大丈夫。私も、信じるって決めたから」


 透夏(そうだ。もう疑うのはよそう。だって天宮くんは、誰よりも私のことを考えてくれているから……)


 本当に逃げ出さなくてよかった。
 話を聞いてよかった。


 もしも聞けていなかったら。もしも逃げたままだったら。
 きっとこうして近くにいることすらできなくなってしまっただろうから。


 透夏(だから私も、天宮くんには全て話そう)


 これから先も共にいられる限り、全部――。


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