スイーツ王子は、お菓子のようには甘くない!
○学校・校舎裏(放課後)
校舎裏で彰を待つ透夏。そのもとに彰がやってくる。
透夏は真っ直ぐに彰を見つめた。
透夏「部活もあるのに、急にごめんね」
彰「いいや。まだ時間あるし、大丈夫。……それで、要件っていうのは」
透夏「……うん。その、この間のことなんだけど」
彰「……覚悟ができたんだな」
緊張した表情の彰を見て頷く。
もう気持ちは決まっていたから。
透夏「私は……自分が思っているよりも、天宮くんのことが好きみたい」
何度も悩んだ。何度も泣いた。
それでも、それだけは嘘偽りのない透夏の本心だったから。
彰「――……それが、婚約者の存在を隠していたようなやつでも?」
透夏「あれは誤解だったの。全部答えてくれたよ」
彰「それでも、黙っていたことに変わりはないだろう?」
透夏「それは……」
言いよどんだ透夏に、彰は困ったような笑みを浮かべた。
彰「それでも、彼が好きなの?」
透夏「……うん」
彰の顔に、胸が締め付けられる。
傷つけてしまったと分かる顔だったから。
それでも――。
透夏「……真村君みたいないい人が、私のどこを好きになってくれたのかは分からない。でも、私を好きだって言ってもらえたのは、すごく光栄だった。私、ずっと自分に自信がなかったから、肯定してもらえたみたいで嬉しかった」
透夏「それでも。……私は、彼じゃないとダメみたい。だから……ごめんなさい」
きっぱりと断る。
ここで答えをごまかす方が、よっぽど彰を傷つけると思ったから。
彰「…………」
透夏「……」
彰「分かった」
少しして、彰は絞り出すような声で返事をした。
彰「考えてくれて、ありがとう」
泣きそうな顔で笑う彰に罪悪感でいっぱいになるが、ここで折れる訳にはいかない。
透夏(私はもう、自分の気持ちに嘘をつけないから……)
自分の気持ちをごまかして、捻じまげようとしてもどうしてもできないことを知ってしまったから。
透夏はただ、頭を下げて見送る。
彰の遠ざかる足音が聞こえなくなってから、顔を上げた。
透夏(……真村くん)
とても悲しい顔をしていた。
無理に笑っているのが分かってしまったから。
なんだか自分まで悲しくなってきて涙ぐんでしまうが、自分が泣く権利なんてないと涙を拭って踵を返した。