スイーツ王子は、お菓子のようには甘くない!

 ということで作り始める(ダイジェストで完成まで)。

 ・バターを溶かして小麦粉(こむぎこ)をふるいにかける
 ・メレンゲづくりの場面
 ・スポンジの土台づくりの場面
 ・クリーム作りの場面
 ・スポンジにクリームを塗る場面

 など



 透夏「よし、完成~!」


 顔にクリームを付けた透夏、満面(まんめん)の笑みでケーキを(かか)げる。


 透夏「じゃあさっそく……」


 二人は同時に一口含み、お互いの顔を見合わせた。


 透夏「ん~~~!」
 朔夜「そうそう、この味!」


 しっかりと水藤印(みずふじじるし)のショートケーキの味になっていた。


 透夏「といっても、やっぱりお父さんのケーキにはほど遠いなぁ」


 父のケーキはもっと幸せがつまっている味がしていた。
 透夏は父の凄さを感じ、決意を新たにする。


 朔夜「透夏のケーキもオレにとっては特別だよ」
 透夏「本当? じゃあ私のケーキのファンってこと?」

 朔夜「ああ」


 ケーキの腕を褒められて嬉しい透夏、頬が緩む。


 透夏「そっか……。私のケーキにファンがついてくれたんだ」
 朔夜「透夏のケーキのファンはオレだけ?」

 透夏「うん。そうだよ」
 朔夜「そっか……」


 朔夜は嬉しそうに頬を掻いた。


 朔夜「じゃあオレが透夏のファン、第一号だな。なんか嬉しいよ」
 透夏「私も。いずれもっとすごいケーキを作れるようになっても、うまくいかないときがあっても、朔夜くんが応援(おうえん)してくれているなら、いくらでも頑張れる気がする」


 朔夜、優しくほほえんで透夏に手を伸ばす。


 触れる手は優しくて、頬をさする感触に自然と目を閉じる。
 けれどもしばらく待っても何も起きないので目を開いた。


 朔夜「……ふっ。またクリームついてたよ」
 透夏「え!?」


 見ると朔夜の指先にはクリームがついていた。


 朔夜「ふふ、あはは! 透夏、スイーツ食べると毎回クリーム付けるんだな」
 透夏「う、うぅ……」


 恥ずかしさのあまりに真っ赤になり、目が(うる)む。
 それを見た朔夜は喉を鳴らした。


 朔夜「ふふ……透夏、かわいい」
 透夏「!」
 朔夜「期待した? なら、応じてやらないとな」


 そう言って透夏の(くちびる)を奪う。

 少し離し、透夏の様子を伺うと、茹でだこのように赤くなりながらも物欲しそうな顔になっていた。
 それに切ない吐息(といき)を漏らした朔夜は、もう一度先ほどより長いキスを落とす。


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