スイーツ王子は、お菓子のようには甘くない!
 ○(回想)付き合うことになった日


 透夏「つ、付き合うって、なんで!?」


 突然の告白に動揺する透夏をよそに、朔夜は意地(いじ)の悪い顔をしている。


 朔夜「オレさ、面倒(めんどう)ごとっ て苦手なんだよね。派閥(はばつ)争いとか、争奪戦(そうだつせん)とか、そういうの」
 透夏「は、はあ」


 朔夜「だから余計な面倒に巻き込まれないように、人当たりの良いキャラを演じてるんだけど、そしたら今度は女が群がってきちゃってさ。ほら、オレってさ、自分でいうのもなんだけどモテる要素しかないだろ?」
 透夏「自分でいうんですね……」


 朔夜のイメージ(スイーツ王子)からかけ離れた朔夜の言動に動揺(どうよう)し、思わずツッコんでしまう。


 朔夜「まあ聞けって。群がってくる女子ってステータス目当ての奴ばっかりなんだよな。もううんざりでさぁ。しかもこの高校、変な校則あるだろ?」
 透夏「……『恋愛は同校の相手に限る』ってやつですか?」

 朔夜「そうそれ。あれのせいで余計に近寄ってきているわけ。で、いい加減うっとうしくてさ」


 話しながら透夏を指さす朔夜。


 朔夜「そこで、あんただ」
 透夏「私?」
 朔夜「そう。彼女がいる男になれば、今みたいに付きまとわれることも減るんじゃないかって思ってな」


 その真意を理解した透夏は顔を引きつらせる。


 透夏「……つまり、私を女子から守るための“壁”にしたいってことですか?」
 朔夜「話が早くて助かる」

 透夏「なんで私が」
 朔夜「んー、そうだな。なんとなく?」

 透夏「は?」
 朔夜「あれ、ダメ?」

 透夏「逆にそんなんで納得できるわけ、なくないですか?」


 ひょっとしたらこの人、適当人間なのかもしれない。と、うさん臭いものを見る目になる。
 透夏の中で、スイーツ王子のイメージが音をたてて壊れた。

 朔夜「えー。面倒だなぁ。……んじゃ、昨日オレをみて逃げようとしたからってのは?」
 透夏「はい?」

 朔夜「あんたならオレのこと好きにならずに壁に……もとい彼女役できるかなってさ」
 透夏「今、彼女のこと壁って言った?」


 透夏のツッコミを無視する朔夜。


 朔夜「オレはあんたの秘密を守る。その代わり、あんたはオレに向けられる好意を(はば)む壁になる。どう? お互いwin-winだろ?」


 とてもいい笑顔を残す朔夜、空き教室のドアに手をかける。


 朔夜「じゃあそう言うことだから」
 透夏「え、っちょ、ま」


 それだけ言い残して去っていった。
 いいともダメとも言っていないが、こうして透夏は実質的な彼女(役)になったのである。

 (回想終了)
< 7 / 74 >

この作品をシェア

pagetop