スイーツ王子は、お菓子のようには甘くない!
――そのとき。
――プルルルル、プルルルル
朔夜のスマホが鳴りひびいた。
透夏「……」
朔夜「……」
朔夜は着信を無視して事を進めようとする。ので、慌てて止めに入る。
透夏「で、でないと」
朔夜「いい。あとで」
透夏「で、でも」
――プルルルル、プルルルル
透夏「な、なにか急な用事かも……?」
朔夜「………………はあ~~」
尚もなり続く着信音に、朔夜は大きなため息を吐いて、透夏の上から退いた。
そしてそのままスマホを取りにいく。
透夏(私ったら……)
残された透夏は先ほどまでのことを思いだして恥ずかしくて死にそうになり、クッションに顔を埋めて突っ伏した。
朔夜「――えっ!? 親父が!?」
ドキドキが止まらず悶え続けていると、廊下から朔夜の焦った声が聞こえてきた。
何だろうと体を起こすと、ちょうど朔夜が部屋に戻ってきたところだった。
朔夜の顔があまりにも青くなっていて、ただ事ではないのだと察する。
透夏「ど、どうしたの?」
朔夜「……親父が」
透夏「お父さんが?」
朔夜「……倒れたって」
透夏「え!?」
朔夜「今病院に運ばれて、検査を受けてるらしい。一応、一命は取りとめたって話だけど、まだ意識は戻らないそうだ」
透夏「っ大変!」
透夏も青くなる。
透夏「すぐにいってあげないと!」
朔夜「……だが」
朔夜は何かに迷っている素振りを見せた。
透夏「なにか、迷っているの?」
朔夜「親父は今、フランスの支社にいる。だから……もしかしたら、しばらく会えなくなってしまうかもしれない」
朔夜は透夏と離れることに躊躇していた。
透夏と再会して、想いが通じ合ったのに。もう離れなくてはいけなくなるなんて、と。
透夏「そんなこと言ってる場合!?」
悩む朔夜に透夏は一喝する。
透夏「私とはまたいつでも会える。でもお父さんは違うでしょ!? 今行かなかったら、この先ずっと言葉を交わせないかもしれないんだよ?」
透夏の頭の中では、ある日突然いなくなってしまった父の姿が浮かんでいた。
涙を浮かべながらも朔夜を諭す。
透夏「なにかあってからじゃ遅いの。会えるときに会っておかないと、きっと後悔する。……私は、朔夜くんに、あんな思いをしてほしくないよ」
朔夜「……透夏」
透夏「だから、行ってあげて」
朔夜はぐっと何かを耐える顔をして、透夏をきつく抱きしめた。
朔夜「……そうだよな。ごめん、オレ動揺していたみたいだ」
朔夜の身体は少し震えていた。
いきなりのことで動揺するのは当然だし、恐ろしいと思うのも当然だ。
朔夜もそうなのだろう。と察した透夏はゆっくりと朔夜の背を撫でた。
透夏「……大丈夫、きっと大丈夫だよ」
朔夜「……あぁ」