有名小説作家の彼氏に別れを告げると全力で拒否された
じわりと涙がこみ上げる。満開の紫陽花の木を横切って、そのまま庭から出ようとした瞬間。


ウエストにまわされる腕。
凄い勢いで後ろから抱き締められた。


「ルイさん?」

「……家に戻って」

「ま、待って下さい」


衝撃で遠くに飛ばされた傘。

屋根のない場所であっという間にふたりとも雨でずぶ濡れになる。


「離してください!」


それでもルイさんは私を抱き締めたまま。抵抗しても離してくれない。無理やり引きずられる形で玄関まで戻された。

バケツの水をかぶったようなふたり。前髪からポツポツと雫が溢れ落ちる。ルイさんは眼鏡を外して口を開く。
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