有名小説作家の彼氏に別れを告げると全力で拒否された
「ちゃんとメイクしてもらって、色を選んでもらったし。全部ヒナちゃんに似合うものだったから無駄にはならないでしょ?」


違う。そうじゃなくて。


「……プレゼントは、特別な時にだけ。がいいんです」

「迷惑だった?」

「正直、嬉しかったです。でも高いものをたくさん買ってもらえるのが当たり前になったらイヤです。ありがとうさえ心から言えない自分になりたくないから」

「……なるほど」


そういうと、私の顔からやっと手を離してくれた。


「ごめんね。初めてのデートで浮かれてた」

「あれで浮かれてたんですか?」


私ばかりドキドキして、目もうまく見れずにいたのに。落ち着いた雰囲気のルイさんとはやっぱり違うと思い込んでいたのに。

ルイさんは紅茶の茶葉をティーポットに入れて、ケトルのお湯を注ぐと、砂時計をひっくり返した。

さらさらと落ちていく砂。

ゆっくりとした時間が流れていく。


「浮かれるくらい楽しかった。彼女のヒナちゃんには何でも買ってあげたくなる。喜んでほしかったから。それで悩ませたなら今後は気を付ける」

「……それでも。気持ちは変わりません」

「え?」


目を見開いて驚く彼の表情を初めて見た。
< 5 / 28 >

この作品をシェア

pagetop