《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
Prologue—————*
『自由になった聖女様』アン・ミカエル・ゴーン著
* * *
星降る国の最果ての地に、優れた聖女様がおりました。
聖女様は『グラシア』という名の不思議なちからを持っていて、傷ついた者たちに癒しの加護を与えることができました。
聖女様が暮らす場所は月の光が当たらぬほど背高い岩山に囲まれていて、人間たちが近寄ることはできません。
太陽が支配する昼間は、太陽の子たちの傷を。
宵闇が支配する夜間は、闇の子たちの病を。
聖女様は、命じられるままに治していました。
太陽と宵闇は、ご褒美として、聖女様に煌めく宝石を与えました。
聖女様は寂しそうに、まばゆい宝石の山を見つめました。
聖女様は、その真ん中にぽつんとひとり、座っているのです。
月の綺麗な夜、東の土地からひとりの旅人がやってきました。
旅人の男は魔法が使えましたので、岩山を砕き、聖女様が暮らす神殿にやってくると、聖女様に言いました。
「私と一緒に行きませんか。岩山の向こうには、広い世界とあなたを求める多くの人間たちがいます。けれど人間たちは貧しくて、あなたに与えるものを何も持たない。それでも彼らには、あなたが必要なのだ」と。
聖女様は迷いませんでした。
なぜなら聖女様は、自由がほしかったのです。
どんなにまばゆい宝石よりも、
ただ、自由が──。
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