《連載中》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
巷を騒がせている『月夜の女神』はレオヴァルトも知っている。教会から光が飛んだという目撃情報も相まって、その正体は中央大聖堂の筆頭聖女、イザベラではないかと噂されている。
レオヴァルトは時々空を見上げながら慎重に馬を走らせ、光の塊を追った。
寝静まる街を通り抜け、その先の貧民街で見たものは————。
ガタン、とスツールが鈍い音を立てる。
窓辺に立つと、白々とぼやけた明るさを世界にもたらしながら、朝陽が山際に顔を出そうとしていた。
「ユフィリアは治癒力を使えるのか……しかもあれほどの人数を、あんな短い時間で」
光の塊からユフィリアが貧民街に降り立つと、まるで待ち望んでいたかのように多くの人々が集まってきた。
病を患う者、怪我をした者。
ひとしきり彼らの治療を行なったあとは、光に導かれながら方々を巡った。
自力で歩けない者にも、聖女のグラシアを施すために。
「無能じゃ、なかったんだな……」