《連載中》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
無能なクズ聖女と呼ばれるユフィリアが献身的に人々の治療にあたる姿を見た段階で、驚愕はすでに通り越している。
今はもう、初めて目の当たりにした聖女の力《グラシア》というものの偉大さに、ただ感服するまでになっていた。
レオヴァルトに見せるユフィリアの、少し怒ったような、苛立ったような面差しがふと過ぎる。
「じゃじゃ馬も、弱き者にはあんなに優しい表情《かお》をするんだな……」
レオヴァルトの口元に、自然と笑みが溢れた。
昇り始めた太陽を眺めながら、レオヴァルトは口元に拳をあてて思案に暮れる。あのような強力なグラシアを持ちながら、なぜユフィリアは教会でその力を発揮しないのか。
同僚の聖女や聖騎士たちから『クズだ』『無能だ』など罵られてまで、いったい何の拘りがあって。
——確か聖女は、治癒の力を消耗すると半日は戻らぬと聞く。もし昼間に教会にやってくる者たちの治療にあたってしまえば、夜間は消耗しきって休むしかない。
途端、脳髄が閃光に貫かれた。弾かれたように、レオヴァルトの黄金色の双眸が虚空を睨む。