《連載中》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!

 ふと、かつて恋人だった聖騎士ルグランの優しい笑顔がよぎった。
 頭を振ってどうにかかき消そうとするけれど、忘れようとすればするほど美しい思い出が膨らんでしまう。
 彼は自分を簡単に捨てた男だ。
 けれど思い出はそう簡単に手放せはしない。

 ——助けて……

 唇を噛み締め、漏れそうになる嗚咽を堪える。こんなことで泣くような自分ではないはずだ。

 その時ガチャリと施錠が外され、ギギ……という不快な音とともに扉が薄く開かれた。
 光の直線が灰色の無機質な床に突き刺ささる。黒い布の目隠しごしに視界が急激に明るくなるのを感じたユフィリアは、眩しさに布の奥で目を閉じる——

 ——誰……っ

 いくらなんでもこんなに短い時間で解放されるはずがない。

 ——ルグラン……?

 


 
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