《連載中》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
「ご……ごめん。信じるから、離して」
互いの姿勢がもとに戻ると、レオヴァルトの眼差しが少しだけ緩んだ。
どうやらレオヴァルトは、ユフィリアが思うよりもよほど真剣なようだ。
「それで。ユフィリアの《《本当の望み》》は何なんだ」
「望み……ね。さすがに世界征服は嘘だけどっ。ほんとに何でも叶えてくれるの?」
出会って間もないこの男をどこまで信用して良いのか正直わからない。けれどレオヴァルトの話ぶりや真剣な眼差しに嘘はないように思える。
契約婚に応じてレオヴァルトに尽力してもらえるのなら………。
たとえユフィリアの望みが叶わず利用されただけの結果になったとしても、今の状況がただ延々と続くだけのこと。
それならば、持ちかけられた契約婚とやらに応じてみるのも悪くないのかもしれない──この傲岸蕪村な男に望みを託すのが、浅はかで儚い希望だとしても。
「大聖堂から……この街から、出ていきたいの。聖都の周りには強力な結界が張られていて、私たち聖女は聖都から外へは出られない。狭い鳥篭《とりかご》のなかで教会に飼われているようなもの……私は結界の外に出て、広い世界を見てみたいの。レイモンドの支配下の聖女として貴族相手に生涯を終えるんじゃなく、もっと自由に困っている人の役に立ちたい……自由にグラシアを使いたい。鳥篭を出て自由に生きてみたいの」