《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
 昨夜、鞭で打たれた背中の傷が治りきらずにどくどくと痛んだ。
 親友の聖女グレースが癒してくれたものの、傷があまりにも深く、下級聖女のグレースの力では完治しなかったようだ。

 ——どうして《まだ》あの夢を見るの……?

 痛む背中をかばいながらピッチャーの水をグラスに注ぐ。
 ひとくち飲めば、気持ちが落ち着いた。

 二度目に《予知夢》を見たのは十六歳、聖女認定の日の前夜。
 それは、たった今ユフィリアが見たのと、ほとんど同じ夢だった。

 聖女の力を試す場で、ユフィリアは他を圧倒するグラシアを見せつけた。
 ユフィリアの強大な力は隣国の王に切望され、その国の王弟陛下との婚姻を結ぶことになったのだ。
 そして——夢の中で見たあの悲劇が起こる。

「王弟陛下《あのひと》を死なせたくない。だから私は、これまで必死で……っ」



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