《連載中》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
「誰だって、あの顔で迫られて『妻になって欲しい』なんて言われたら、そりゃあ驚くわよ」
あれからすぐに、レオヴァルトは神官に呼ばれ、早々に身支度を整えるとユフィリアを置いて部屋を出て行ってしまった。
その理由が『レイモンド司祭からの伝令だ』と聞けば、やはりまだ心を許すべきではないと思ってしまう。
『一時的に気配を消してやるから自室に帰れ……消すのは気配だけだ、気づかれにくくはなるが姿を消すわけじゃない。誰にも見られるなよ』
レオヴァルトはそんな事を言って片手のひらをユフィリアに翳しながら、なにやら詠唱らしきものを唱えていたが──果たしてユフィリアの気配なるものが本当に消されていたのかはわからない。
「ふんっ、どっちにしても胡散《うさん》臭い。あ〜あ……雰囲気に絆されて本心なんか語っちゃったし、大反省よ」
レイモンド卿の配下の男に《聖都から出してくれ》だなんて口にしてしまった自分の浅はかさを呪う。
──必ず叶えてやる。
それでもレオヴァルトの言葉は力強く響き、ユフィリアを見つめる双眸にも揺るぎがなかった。
ユフィリアを教会から逃すのはレイモンド司祭への背徳行為だ。
それでもこんな話を持ちかけたのは、彼の《望むもの》が彼にとってそれほど重大だということだろうか。