《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
毛むくじゃらの身体に鼠《ネズミ》の頭部を乗せた魔獣の周囲を、レオヴァルトはひた走る。それを追うように地表から次々と土煙《つちけむり》が立ち昇った。
一向に仕留められない《敵》に苛立った大黒鼠が爛々と二つの眼を光らせ、両腕を変化させた大鎌の刃《やいば》をやみくもに地面を打ちつけ始めた。
「ひゃぁぁ────っ!」
数メートル離れた場所で抱き合っていた二人が、降り注ぐ土の雨に叫び声をあげる。
二階建ての建物ほどある巨大な黒鼠だ。これが聖都の真ん中に姿を現してから幾分時間が経っているが被害は少ない。この場所が建物の無い広場だったのは幸いだった。
時空の裂け目に生じた異空間からこのような魔獣が飛び出すのは珍しくない。
遠巻きに恐々と眺める人々は、教会から派遣された黒騎士と魔獣の動向を身じろぎもせずに見守っている。
黒騎士が到着する前まで、ありったけの武器を装した町人たちが必死な抵抗を重ねていたのだった。すでに数名の怪我人も出ている、身体を切り裂かれた重症者もいるようだ。