《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!

 魔獣の「ギャアアアアアア………」という悲鳴にも似た叫びが次第に消えていく。大鼠を覆い尽くしていた光が一瞬小さくなったかと思うと、瞬く間に大きく膨らんでいく。はち切れんばかりに巨大化した光の玉がブワッと弾けた。

 黄金の光が一変し、黒い汚泥と化した《《鼠だったもの》》が周囲に飛び散る……人々が《穢れ》と忌む、滅された魔獣の残穢だ。

 黒光りする汚泥はレオヴァルトの白磁の頬にも容赦なく散った。
 馬の踵を返すと大聖堂の方角を一瞥し、一台の馬車が近づくのを確認する──怪我人の治癒のために派遣された聖女たちの馬車が、レオヴァルトに遅れて到着したのだった。
  
「レオヴァルト様……っ、ま、魔獣は……?」

 馬車から降り立った神官が周囲を見廻し、そして黒い泥が散ったレオヴァルトの顔を見て「おっ」と息を呑む。
 神官に続いて、最初に馬車を降りたのは──イザベラだった。

「重症者がいる。早く治療してやれ」




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