《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
緊張で今にも漏らしてしまいそうな怯《おび》え方だが、レイモンド卿といえば一度でも粗相をすれば挽回不能、聖職に就いていると言えども赦される事はなく、底辺の扱いを受けると神官の間で噂されていた。
「なんだと」
「でっ、ですから……聖女ユフィリア様が……ちょ、」
神官が言い終わらぬうち、レイモンド卿は手に持っていた紙の束をバンと音を立てて机上に打ちつけた。
「あいつ、逃げたのか」
「は……はぁ、そのようで……ございます」
レイモンドは顎に手をあて、思案する。
ユフィリア一人の力であの頑丈な鍵を外せるわけがない。
ともすれば──恐らく。
レイモンド卿の脳裏には、婚約者としてあてがった黒騎士レオヴァルトの傍若無人な横顔が浮かんでいた。
「……まぁ良い。あの部屋を抜け出したとて教会の敷地から外へは出られんのだ。差し詰め自室にでも逃げ込んだのだろう」
ここ数日教会の収入が思わしくなく、ちょうど気分が荒んでいたところだ。
──今夜あたり呼び出して、《罰》を与えねばならぬな。
子憎たらしいあの少女が白い肌を血まみれにするのを想像すると、《《性衝動》》による身震いが腹の奥から湧き上がってくる。
レイモンド卿はいわゆる《ヘモフィリア》──血液性愛者であった。