《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
「欲しいものがあるの」
「言ってごらん、可愛いイザベラ。わたしの手に及ぶものならば、なんでも手に入れてやるぞ」
「あの黒騎士が欲しいの」
何を言われたのか理解が及ばず、レイモンド卿の動作が止まる。
「レオヴァルトとかいう、あの男が欲しいの。彼の魔力は素晴らしいわ、今日、この目で見たのよ。数人がかりで駆除する魔獣をたった一人で、一撃で倒した。彼がわたくしの夫となって《交われ》ば、わたくしのグラシアは他を圧倒するものになる。結婚してもわたくしがあの黒騎士と一緒にこの中央大聖堂に残れば、今よりもっと大勢の貴族を治癒できるし教会も助かるでしょう? ねぇ叔父様……っ、とっても良い案だと思わない?」
これまでレイモンド卿は、亡き妹の娘イザベラの望みならどんな難題でも叶えてきた。だがしかし──今度ばかりは叶えてやれない特別な《事情》がある。
「イザベラ……そなたの言うことは理解できるが彼らはすでに婚約済みだ。それにあの黒騎士をユフィリアと婚約させたのには、その、複雑な事情があってな。そう簡単にはいかないのだよ」
「複雑な事情って?! 何なの、そんなの叔父様の力で何とでもなるじゃない」
レイモンド卿をキッと睨みつけたイザベラが食い下がる。