《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!

「イザベラや。ヴェルダール皇帝陛下が有能な聖女をご所望なのは知っているな?」
「あの冷酷非道で名高い恐ろしい方よね。知っているわ」
「ここ数年、前任の聖女を失ってからと言うもの、皇帝のそばに仕える聖女が不在となっている。陛下はイザベラ……そなたをご所望になったのだ。だがしかし」

「なんですって?! わっ、わたくしは嫌よ! あんな恐ろしい男のそばに仕えるなんて。だって前任の聖女も戦地に何度も駆り出されて散々こき使われた挙句、敵の刃に討たれたって聞いたわ。戦場に出て死ぬのなんて、まっぴらごめんよっ」

「そう慌てなくても良い、はなからそなたを皇帝に差し出す気はない。《《そのために》》あのクズ聖女と黒騎士がおるのだ」

「……ぇ……?」

 レイモンドの思惑は、暗雲のごとく渦巻いている。

 ──ヴェルダール皇帝陛下に媚《こび》を売る。
 グラシアを強大化させたユフィリアとあの黒騎士とを一緒に差し出せば、私の大きな手柄となるだろう。何せ陛下にとっては、有能な聖女と黒騎士の魔力という《戦力》を同時に得られるのだからな……

 そしてこの陰謀にも似た策略は、レイモンド卿の圧倒的勝利を迎えるだろう。

 ──皇帝陛下のお力添えさえあれば、あの老耄《おいぼれ》ルグリエットを聖職から引きずり下ろし、この私が次の大司祭となる。教会の富と権威を欲しいままにするのも夢でなくなるのだ。その日のために私は、これほどまで必死に金を集めているのだ……!




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