《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
──ユフィリアは、どうしているだろうか。
懲罰室を抜け出している。
気づいた神官がレイモンド卿に告げているだろう。
更なる罰を受けていないだろうかと案じていたその時だ。
「いたっ、レオヴァルト様ぁぁ……っ!」
見れば、ユフィリアの友人の下級聖女が息を弾ませながら駆け寄ってくる。
確か名前はグレースだ。
その必死の形相に、ただ事ではないと悟った。
「やっぱり、こちらでしたか……、良かった、見つかって……」
「慌ててどうしたんだ? 何があった」
グレースは「はあ、はあ」と荒い吐息を必死で宥《なだ》めようとしている。
「ユフィーを……助けてください……ユフィーは……ああっ」
「ゆっくりでいい、落ち着いて話してくれ。ユフィリアがどうした?」
おさげに結った赤毛が呼吸のたびに揺れている。
縋るような視線は、しっかりとレオヴァルトの双眸を捉えていた。
「ユフィーがレイモンドに、また……虐待されようとしてるの……っ」
「虐待……?」
レオヴァルトの秀麗な面輪に浮かんでいた戸惑いは──その意味を噛み砕くうち、みるみる怒りの色へと変わっていった。