《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!

 不思議だった。
 ユフィリアはもう、おそらく自分を救うために駆けつけたこの人物が、《《ルグラン》》だとは思わないのだった。

 ──レオ……? 来て、くれたの?

 しっかりと両目が開かなくても、視界の端に映る姿と気配でそれがわかる。
 蹴破られた扉を背にして、血相を変えたレオヴァルトが殴りつけた拳をそのままに、猛然と立っていた。
 
「レイモンド、ここで何してる! 仮にも貴様は聖職者じゃないのか、無抵抗な女ひとりを相手に何を……」

 レイモンドの背中が眼前から消えた途端、レオヴァルトは二つの眼《め》を裂けんばかりに見開いた。
 そこにあるものの状態がすぐには把握できない。しかし、想像を逸脱した光景が目に飛び込んできたのは確かだった。

「ユフィ、リア……」

 吐息にも似た、言葉にならない声が漏れる。
 切り裂かれたような聖衣をかろうじて纏い、鮮血に染まった背中を天井にさらして弱々しく横たわる肢体《からだ》。周囲に散った血痕が彼女の身に起こった惨劇を物語っていた。

 ──酷い傷だ……!




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