《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
白薔薇の筆頭聖女
どうぞと言えば、赤毛を一つに束ねて編んだものを肩から垂らした少女が遠慮がちに扉を開けて顔を覗かせた。
グレースの愛すべき頬のそばかすは今日も可愛いと、ユフィリアは柔らかく微笑む。
「この本、《《また》》読んでたんだ」
「……ん?」
「こんなにボロボロになるまで何度も読みこんで。ユフィったら、よほどお気に入りなのね」
にっこり微笑んだグレースが、文机の上に置かれた一冊の薄い絵本を手に取った。
四隅の紙が捲れ上がっていて、古びて色褪せかけた表紙には細かい皺が寄っている。
「ぅん……と」
絵本を開いて眺めるグレースに、ユフィリアはひどく照れくさそうにする。
「おかしいよね、《《ただのおとぎ話》》なのに」
「でも、ユフィは実話だって、信じてるんでしょ?」
──権力者に能力を査収されながらも、貧しい者を救い続けた聖女が尊い神力の加護を受け、自由を勝ち取る物語を──。