《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
 ユフィリアの部屋は建物の二階なので、窓を開けていれば階下の音が風に運ばれてくる。聞くともなく聞いていると、集まった者たちは聖女を称える言葉を口々に叫びはじめた。

「聖女イザベラ様、腕の傷痕がきれいさっぱり消え去りました。本当に有難うございます」

 ——イザベラ……

 耳に届いたその名を聞いたとたん、ユフィリアの頬が糸を張ったように引き攣った。

「聖女様のおかげで夫は皇城で恥をかかずにすみます。感謝の気持ちとして、提示額の倍額をお支払いいたしますわ」

 ——たかが腕の傷跡ひとつ消すために幾ら払うつもりなの

「類稀《たぐいまれ》なる美貌に加え、弱き者たちに救いの手を差し伸べてくださるイザベラ様はまるで天使だ!」

 


 
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