《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
仕組まれた婚約
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「呑気なものだな」
背後で抑揚のない低い声がして、振り返ったユフィリアは丸い碧《みどり》の瞳を更に大きく見開いた。
眩しいほどの朝日が真横から差し込んでいる。
大聖堂に続く外廊下に人の気配はすでになく、閑散としていた。
「礼拝が始まっている。急ごうという気はないのか?」
大理石造りの円柱に背中を預けて腕を組んでいた黒い人影が「やれやれ」と呟きながら気怠《けだる》そうに身を起こす。
「またあんたなの。そんなところに突っ立って、朝っぱらから私に何のご用…………?」
ユフィリアは思う、どこか爽やかさを纏《まと》った「青年」という響きすら、この胡散な「男」には不似合いだと。
昨夜見たままのくたびれた職服に、今にも破れそうなマントを肩から重そうに垂らしている。背まで伸びた黒灰色の髪を無造作に後ろに括り、前髪はやはり伸びきっていて、男の顔の半分を隠していた。
——けっこう綺麗な顔をしてるのに、これじゃ台無しね。
「呑気なものだな」
背後で抑揚のない低い声がして、振り返ったユフィリアは丸い碧《みどり》の瞳を更に大きく見開いた。
眩しいほどの朝日が真横から差し込んでいる。
大聖堂に続く外廊下に人の気配はすでになく、閑散としていた。
「礼拝が始まっている。急ごうという気はないのか?」
大理石造りの円柱に背中を預けて腕を組んでいた黒い人影が「やれやれ」と呟きながら気怠《けだる》そうに身を起こす。
「またあんたなの。そんなところに突っ立って、朝っぱらから私に何のご用…………?」
ユフィリアは思う、どこか爽やかさを纏《まと》った「青年」という響きすら、この胡散な「男」には不似合いだと。
昨夜見たままのくたびれた職服に、今にも破れそうなマントを肩から重そうに垂らしている。背まで伸びた黒灰色の髪を無造作に後ろに括り、前髪はやはり伸びきっていて、男の顔の半分を隠していた。
——けっこう綺麗な顔をしてるのに、これじゃ台無しね。