《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
 ユフィリアは遅刻の常習犯なので、この扉を開けても音がしないのはすでに確認済みだ。

 やはり朝の礼拝は始まっていて、聖書を読み聴かせてくださる大司祭、聖《セント》ルグリエット様の好い声が、ステンドグラスを張り巡らせた荘厳な空間を満たしていた。

 ——ああっ……癒される……

 恍惚と頬を緩めるユフィリアだが、今はうっとり美声に聴き入っている場合ではない。

『ほら、こっち!』

 黒騎士の腕を引っ張りながら、いつものように後方に並ぶ若い神官たちをかき分けて、聖女見習いの少女たちの後ろにそうっと立った……つもりだった。

『うわ?!』

 ユフィリア一人なら、いつも通りしれっと入りこめたはずだ。
 けれど今朝は無駄に図体のでかい男を連れている……それも、黒騎士を。

 若い神官たちが輝くような純白の聖衣を身につけている中に、くたびれたローブを纏った黒騎士が平然と混ざれるはずもなかった。

 ——目立ってる!?



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