《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
 しかも他の神官たちより頭一つぶんは背が高い。今まさにこちらを向いている大司祭様から見れば、異質なのは一目瞭然であろう。
 あまつさえ周囲の若い神官や聖女見習いたちが目を剥いて、互いにコソコソと囁き始めているのだ。

 ——やばいやばいやばい。
 やっぱり黒騎士なんか連れて入るべきじゃなかった……!

 己の浅はかさを全力で呪いたくなる。
 大司祭・聖《セント》ルグリエット様といえば、中央大聖堂に従事する神官や司祭たちの最高位にあたるお方である。神の化身と称えられ、ユフィリアたち古株の聖女でも話しかけることすら許されない。
 要するに、著名な教会関係者が一堂に名を連ねる巨大なピラミッドの、いちばんてっぺんに鎮座される神がかった存在なのだ。

 もしも黒騎士を連れて入ったのがユフィリアだと大司祭様に知られれば……。
 罰を受けて教会を追い出されるのならそれも好かろう、むしろ望むところだ。
 けれどあの腹黒い筆頭司祭・レイモンド卿は金儲けの道具をそう簡単に手放しはしない。グレースに治してもらったばかりの背中に、更なる傷跡を増やすだけだ。

 ——ここを出よう。こっそり入ってこられたのだから、こっそり出ていけるはず!



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