《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
『この役立たずの穀潰しが——』

 レイモンド卿に閉じ込められた、教会という名の『鳥籠』。
 そして今、ユフィリアに浴びせられる罵声はあの頃とさほど変わらない。

『その腐った自我をまだ通すつもりか!?』

 レイモンド卿は、機嫌が悪いと苛立ちをぶつけるように暴挙に出る。傷が治るのを良いことに、体罰はいつも力任せだ。
 罵声を浴びせられながら鞭を打たれるユフィリアは、ただひたすら痛みに耐え続ける。ぶたれる辛さなど貧民街で暮らしていた頃を思えばずっとマシだ。

 聖女の力・グラシアの加護によって傷は治るが、受けた痛みはそのまま感じでしまう。そして鞭を振るうレイモンド卿——聖職者の仮面を被った悪魔——の手は、ユフィリアが気を失う寸前になってようやく止まるのだった。


 ——見習いの頃の私は、未熟さゆえに何も知らなかった。
 認められたくて、必死で貴族の頭痛を治している間に、ひとつの尊い命が失われていた。
 捨て置かれたのは、幼い子どもだった。
 あのとき初めて、グラシアを本当に必要としていた人びとの屍《しかばね》を、知らずに積み上げていた自分の罪深さを呪ったのだ。




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