《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
レオヴァルトに「もう行きましょう」と促して、背を向けたユフィリアを罵声が呼び止めた。
「ねぇユフィリア! あなた、公爵家のご当主様にいただいたお菓子を突き返したそうね。こんなものを食べたって神聖力《グラシア》は回復しない。お菓子を持ってくるほど症状に余裕があるなら教会に来るな! って叫んだそうじゃない……!」
「自殺行為よ。レイモンド司祭様の助け舟がなければ首が飛んでいたかも。無能、つまり『能《のう》が無い』と言われるだけあって、頭の方もよろしくないようね」
首が飛ばなかった代わりに鞭が飛んだ。その結果が背中の傷だ。
身体じゅうに迸る灼けるような痛みを、ユフィリア以外の聖女たちは一生涯知り得ないだろう。
レオヴァルトが隣に立つユフィリアを一瞥する。
昨日までの威勢の良さはどこに消えてしまったのか。唇を一文字に引き結び、睫毛を伏せた瞳は感情を持たないままどこか一点を見つめている。
ユフィリアが黙っているのを良いことに、聖女たちの悪態はとどまるところを知らないようだ。