《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
 
 南から渡ってきた移民が聖都に持ち込んだ流行病のせいで、教会の表《おもて》には連日長蛇の列ができていた。
 重篤な病や怪我は中級以上の聖女が出張などで治癒にあたるため、流行病の治癒はグレースたち下級聖女の役目だ。

 命をうばうほど重篤にならない病ではあるものの、一人を治癒すれば数時間は寝たきりになる。治しては休み、また治すを繰り返しているうちに、あっという間に日が暮れた。

「……ユフィっ」

 怒涛の一日を終えて落ち着けば、親友への想いがどっと頭にのぼってくる。
 ユフィリアが卒倒しそうになったのも、自分の治癒力が弱かったせいではなかろうか。背中の傷の治りが悪いのも気がかりだった。

 今朝の礼拝でユフィリアの突然の《婚約宣告》を聞いたグレースだが、その後ユフィリアには会っていない。礼拝を終えてすぐ神官に呼び出され、聖都への遣いを頼まれてしまったからだ。



 
 
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