《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
「ほら、私って神聖力が微弱すぎるでしょ? だから教会側は早く結婚させたいんだと思う」
特にあのレイモンドがね、とユフィリアはウィンクしながら付け加えた。
「じゃあユフィは、知らない男の人をいきなり婚約者に仕立て上げられたってこと?」
——おまえが聖女として無能だからじゃないのか。
レオヴァルトの嫌味な微笑みが浮かんで、ユフィリアはむっ、と唇を尖らせる。
大聖堂で卒倒しそうになった時、
『ユフィリア。』
自分の名を呼ぶ声を耳の奥で聞いたような気がした。
《予知夢》で聞いた声のはずなのに、どこか懐かしさを覚える……そんな不思議な感覚にとらわれた。
「王弟、陛下……?」
思わず口を突いて出た言葉にグレースが首を傾げるのを、「ううん何でもない」とふるふる首を振る。
「でも、彼。遠目に見ただけだけれど、ワイルドな感じがちょっとかっこよくなかった?」
かっこよい、という言葉にユフィリアは世界が終わったような声で「グレース……」と反論する。