《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!

「ほら、私って神聖力が微弱すぎるでしょ? だから教会側は早く結婚させたいんだと思う」

 特にあのレイモンドがね、とユフィリアはウィンクしながら付け加えた。

「じゃあユフィは、知らない男の人をいきなり婚約者に仕立て上げられたってこと?」

 ——おまえが聖女として無能だからじゃないのか。
 レオヴァルトの嫌味な微笑みが浮かんで、ユフィリアはむっ、と唇を尖らせる。

 大聖堂で卒倒しそうになった時、
 『ユフィリア。』
 自分の名を呼ぶ声を耳の奥で聞いたような気がした。
 《予知夢》で聞いた声のはずなのに、どこか懐かしさを覚える……そんな不思議な感覚にとらわれた。

「王弟、陛下……?」

 思わず口を突いて出た言葉にグレースが首を傾げるのを、「ううん何でもない」とふるふる首を振る。

「でも、彼。遠目に見ただけだけれど、ワイルドな感じがちょっとかっこよくなかった?」

 かっこよい、という言葉にユフィリアは世界が終わったような声で「グレース……」と反論する。


< 63 / 156 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop