《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!

「なに言ってるの、ちゃんと見えてた? ワイルドって言えば聞こえはいいけど、身だしなみに気を配ってないだけでしょう」
「ふふ、魔獣を討伐するのがお役目の黒騎士だもの。身だしなみなんて気を配っていられないのよ」

「グレースは知らないからよ、あの黒騎士のいけすかなさを」

 他の聖女たちがレオヴァルトの身なりが見すぼらしいだの穢れているだのと散々ばかにしたものを、グレースは聖母様のような優しさで庇護しようとしている。
 そんなグレースに改めて尊敬の眼差しを向けながらも、ユフィリアの見方は懐疑的だ。

「ちょとまって。確かにユフィの《心の病を治す能力》は唯一のものだけれど……そこまでしてユフィひとりの力を増幅させたいって理由がよくわからないわね? それに……ユフィの力を増幅させたところで、ユフィは大聖堂を出て行ってしまうわけでしょう? それじゃ意味がないのだし」

「グレース、それよっ」

 突然、雲がかった頭の中に強い風が吹いたようだった。一気に疑問が吹き飛ばされ、視界が冴え渡る。

「なんで黒騎士なのかって思ってたの。でもその理由がわかった気がする。黒騎士は没落貴族だから領地を持たない。あの黒騎士が教会に雇われているとしたら、私と結婚したあともずっと中央大聖堂《ここ》に居座る……そして私もずっと、ここに……」

 ──結婚したあとも聖都を出られず、レイモンドの支配下に置かれてしまう……!


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