《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
ユフィリアが来るのを待ち構え、事情も告げずに既成事実を作らせたあの黒騎士は間違いなく教会、つまりはレイモンド卿の差し金だ。
婚約させられてしまったものは、どうしようもない。
けれどさすがに結婚の儀式までユフィリアが知らぬうちに、とはいかないだろう。
「拒否権がないとか言ってたけど。正式な結婚を拒みさえすれば、まだ争うチャンスはあるはずよ? あの黒騎士が教会とどんな契約結んだのか知らないけど、残りの長い人生棒に振るような夫婦生活なんて誰だって望まない。こうなったらとことんクズっぽく振るまって、黒騎士《あっち》から断らせてやるっ……こんな《クズ聖女》との結婚なんかお断りだって……」
テーブルの上に組んだ両手をポキポキと鳴らし、ユフィリアは瞳に炎のような闘志をみなぎらせる。
——ユフィがクズ聖女のレッテルを貼られるのは嫌《いや》。
なのにユフィったら、クズを加速させようとしてる……っ
「ふっふ」と不適な笑みを浮かべる親友に微笑みを返しながら、グレースは冷や汗を滲ませた。
꙳ ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ꙳
寝台に腰掛けたレオヴァルトは、窓際に置かれた小さなテーブルを呆けたように見つめていた。
四角い窓辺から差し込むまばゆい朝陽が、殺風景な部屋の隅々までを容赦なく照らし出す。